苻洛

苻洛（ふ らく）

苻洛は、五胡十六国時代の前秦の皇族であり、初代皇帝苻健の甥にあたります。その生涯は、武勇に秀でた将軍としての活躍と、苻堅への不満から起こした反乱、そして悲劇的な最期という、波乱に満ちたものでした。

生涯

苻洛は、略陽郡臨渭県（現在の甘粛省天水市秦安県の東南）の出身で、勇敢で力が強く、徒手空拳で暴れる牛を制し、鉄板を射抜くほどの弓術の持ち主でした。早くから安北将軍・幽州刺史に任じられ、行唐公に封じられるなど、その能力は高く評価されていました。

代の攻略

376年、苻堅は苻洛を北討大将軍に任じ、10万の兵を率いて代の攻略を命じました。倶難、鄧羌、張蚝ら総勢20万を超える大軍を率い、鉄弗部大人の劉衛辰を嚮導として代に侵攻しました。

代王拓跋什翼犍は、劉庫仁に10万の兵を与え苻洛を阻ませますが、苻洛は大勝。拓跋什翼犍は陰山の北へ逃走。その後、苻洛は雲中へ進軍し、抵抗勢力を一掃して代を併呑しました。この功績により、征北将軍を加えられています。

苻洛は、拓跋什翼犍の子である拓跋窟咄を長安に遷し、苻堅に取り立てるよう進言しました。

反乱

苻洛は、苻堅から警戒され、辺境の州牧に置かれることに不満を抱いていました。代の平定後、開府儀同三司を望みましたが、苻堅はこれを許さなかったため、不満はさらに募りました。

380年、苻洛は益州牧に任じられ、成都へ赴くよう命じられます。しかし、苻洛は「これは苻堅が自分を陥れるための策略だ」と考え、部下の平規らの進言を受け、反乱を決意します。平規を輔国将軍・幽州刺史に任じ、玄菟郡太守吉貞、遼東郡太守趙讃らを側近として登用。鮮卑・烏桓などの諸国に兵を徴発しようとしましたが、諸国は応じませんでした。

苻洛は7万の兵を率いて挙兵し、秦王を自称。苻堅討伐を目指しますが、竇衝率いる前秦軍に中山で大敗。捕らえられ長安へ送られました。兄の苻重も討伐軍に討たれ、幽州は再び前秦の支配下に戻りました。苻堅は苻洛の罪を赦免したものの、涼州の西海郡へ流罪としました。

最期

383年の淝水の戦いでの前秦の敗北後、涼州は混乱し、刺史の梁熙は呂光と対立するようになります。張統は梁熙に対し、苻洛を盟主に推戴することを勧めますが、梁熙はこれを拒否。逆に苻洛を警戒し、間もなく殺害してしまいました。

苻洛の生涯は、その武勇と功績にもかかわらず、苻堅との関係、そして自身の野心が災いし、悲劇的な結末を迎えたと言えるでしょう。

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