北島雪山

北島雪山（きたじま せつざん）

北島雪山は、寛永13年（1636年）に生まれ、元禄10年閏2月14日（1697年4月5日）に没した江戸時代前期の書家であり、陽明学者としても知られています。彼は、黄檗僧などから文徴明の書法を学び、唐様の書風の基礎を築き上げました。

名は三立といい、雪山・雪参・花隠・蘭隠・花谿子・蘭隠立・蘭畹など、数多くの号を持っていたことでも知られています。肥後（現在の熊本県）出身です。

生涯

寛永13年（1636年）、肥後熊本藩の儒医であった北島宗宅の次男として生を受けました。北島家は、豊後久住の大友一族である志賀能郷を祖とし、代々「三立」の名を継承していました。宗宅は18代目に当たり、合志郷村吉に住んでいました。その後、加藤家の侍医を務めましたが、加藤家が改易されたため、細川家の藩医となりました。

幼少の頃より、日蓮宗妙永寺の住持である日収上人から書と朱子学を学びました。藩主の許可を得て、父と共にたびたび長崎に遊学し、黄檗僧の雪機定然、独立性易、即非如一や、儒者の愈立徳から大きな影響を受け、文徴明や趙孟頫の書法を習得しました。後に、張瑞図の書風も取り入れています。また、愈立徳に師事し、陽明学を深く修めました。

寛文4年（1664年）には、熊本藩の儒医として仕官しました。寛文7年（1667年）には、藩主の細川綱利から命を受け、『肥後国郡一統志』の編纂に従事しました。この書は、江戸時代における最も早い地誌の一つであり、中世の肥後を研究する上で非常に貴重な資料となっています。

寛文10年（1670年）、江戸幕府による突然の陽明学禁止令によって熊本藩を追放され、京都・江戸を流浪する生活を送りました。延宝5年（1677年）、江戸に出て、書家・陽明学者として広く知られるようになりました。特に唐様の書風は高い評価を受け、「雪山流」を興しました。後に唐様を江戸に広めた細井広沢などが彼の門下生となっています。また、林鵞峰、木下順庵、人見卜幽など、多くの儒学者とも交流を持ちました。

雪山は、豪放磊落な性格で、大酒豪であり、奇行が多かったことでも知られています。伴蒿蹊の『近世畸人伝』巻5にもその逸話が取り上げられています。それによると、貧窮のため雨漏りのする家に住み、天井から吊るしたタライの下で書をしたと伝えられています。また、ある時、太守から中国で額字を作るための草案として大字の揮毫を依頼された際、大筆を持っていなかったため、簾の萱を筆の代わりに使用したという逸話も残っています。

元禄10年（1697年）閏2月14日、長崎丸山にて亡くなり、長崎晧台寺に埋葬されました。

作品

『草書唐詩五言屏風』
『唐詩六曲屏風』
『陶淵明詩巻』

参考文献

大槻幹郎編『黄檗文化人名辞典』1988年 思文閣出版 ISBN 4784205381
* 堤克彦「北島雪山」（菊池市社会教育委員会）

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