北条実泰

北条実泰：金沢流北条氏の祖、その生涯

北条実泰（ほうじょう さねやす）は、鎌倉時代前期に生きた北条氏の一門であり、金沢流北条氏の祖として知られています。金沢実泰（かねさわ さねやす）とも呼ばれます。

生い立ちと元服

父は鎌倉幕府の第2代執権である北条義時、母は義時の継室である伊賀の方です。北条政村、北条時尚とは同母兄弟にあたります。承元2年（1208年）、義時が46歳の時に誕生しました。建保2年（1214年）には、従兄弟にあたる将軍・源実朝の御前で元服を行い、烏帽子親である実朝から偏諱を授かり、実義（さねよし）と名乗りました。

伊賀氏事件とその後

貞応2年（1223年）に祗候番に任じられ、翌元仁元年（1224年）、17歳の時に父・義時が急死。母である伊賀の方が、同母兄の政村を後継者に立てようとした伊賀氏事件が勃発し、政村・実義兄弟は窮地に立たされます。伊賀の方は流罪となりますが、異母兄である泰時の計らいにより、政村と実義は連座を免れ、実義は父の遺領として武蔵国六浦荘（現在の横浜市金沢区）に所領を与えられました。この頃、泰時から偏諱を授けられ、実泰に改名したとされています。

小侍所別当への就任と精神の不安定化

寛喜2年（1230年）には、兄・重時の六波羅探題就任に伴い、23歳で後任の小侍所別当に就任します。この人事は、兄である北条有時・政村を飛び越えたものであり、実泰の能力と泰時への忠実さが考慮された起用とみられています。しかし、実泰は伊賀氏事件以降の立場の不安定さに耐えられず、精神の安定を崩したと見られています。天福2年（1234年）6月26日には、誤って腹を突き切って度々気絶し、狂気の自害かと噂されました。また、小怪異・妖言などがあり、『明月記』の著者である藤原定家は「北条一門は毎年6月に事が起きる」と述べています。

出家と晩年

天福2年（1234年）6月30日、病により家督を11歳の嫡男・実時に譲って27歳で出家しました。その後、弘長3年（1263年）9月26日に56歳で死去しています。

北条実泰は、激動の鎌倉時代前期において、北条氏の一門として重要な役割を果たしました。特に、金沢流北条氏の祖としての功績は大きく、その後の歴史に大きな影響を与えました。

参考文献

御家人制研究会 編『吾妻鏡人名索引』吉川弘文館、1971年3月。ISBN 4642001751。 
角田朋彦（著）、再興中世前期勉強会（編）「偏諱の話」『段かづら : 再興中世前期勉強会会報』3・4号、再興中世前期勉強会、2004年。
洞院公定「国立国会図書館デジタルコレクション 平氏」『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集』 第11、吉川弘文館、1903年。
永井晋『金沢北条氏の研究』八木書店、2006年12月。ISBN 4840620253。 
* 山野龍太郎 著「鎌倉期武士社会における烏帽子親子関係」、山本隆志 編『日本中世政治文化論の射程』思文閣出版、2012年3月。ISBN 9784784216208。

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