千代田区の町名

千代田区の町名について

この記事では、東京都千代田区に存在する、または過去に存在した町名について、その変遷を詳しく解説します。明治時代初期から現在に至るまでの町名の変化、区の成立過程、関東大震災の影響、住居表示の実施状況など、千代田区の歴史と町名のルーツを探る上で重要な情報を提供します。

千代田区の前史と行政区画の変遷

千代田区は、1947年（昭和22年）3月15日に、旧麹町区と旧神田区が合併して誕生しました。ここでは、明治時代初期から千代田区成立までの行政区画の変遷について概説します。

東京府の成立と区画整理

1868年（慶応4年）、「江戸」が「東京」と改称され、東京府が設置されました。その後、東京市が発足するまでの間、東京府の行政区画は頻繁に変更されました。番組制、大区小区制、15区6郡制といった制度が導入され、目まぐるしい変化を遂げました。

1869年（明治2年）には、市街地と農村部の境界を定める朱引（しゅびき）が行われました。皇居を中心とした市街地が朱引内とされ、50の区画に分けられました。これが50番組（50区）です。また、名主制度が廃止されました。後に千代田区となる区域は、このうち23番組、31番組から36番組、38番組に属していました。

1871年（明治4年）には朱引が見直され、朱引内が44区、朱引外が25区（計69区）に区分されました。同年、廃藩置県が実施され、従来の東京府、品川県、小菅県が廃止され、新たな東京府が設置されました。同時に、朱引が廃止され、府内は6大区・97小区に分けられました。その後、区画は再度見直され、朱引が復活し、朱引内外に11大区・103小区が設置されました。千代田区となる区域は、このうち朱引内の第1大区第1 - 4、11、12小区、第2大区第1小区、第3大区1 - 4、9小区、第4大区1、2 - 5小区、第5大区第2 - 4小区に属していました。

麹町区と神田区の成立

1878年（明治11年）11月2日、郡区町村編制法の施行に伴い、大区小区制が廃止され、東京府下に15区6郡が設置されました。この時、千代田区の前身となる麹町区と神田区が誕生しました。1889年（明治22年）、市制・町村制が施行され、東京市が成立。麹町区、神田区は東京市の区となりました。

1943年（昭和18年）7月1日、東京府と東京市が廃止され、新たに東京都が設置されました。麹町区と神田区を含む35区は東京都直轄の区となりました。そして、1947年（昭和22年）3月15日、麹町区と神田区が合併し、現在の千代田区が誕生しました。

関東大震災と町名整理

1923年（大正12年）の関東大震災は、麹町区と神田区に甚大な被害をもたらしました。震災復興後の区画整理に伴い、1929年（昭和3年）から1938年（昭和13年）にかけて、両区の大部分で町名の統合整理が実施されました。これにより、明治時代初期に存在した旧町名の多くが廃止され、町名が引き継がれたものについても、町界が大きく変わりました。

例えば、旧麹町区の一番町は、現在では三番町となっています。また、現在の千代田区一番町は、町名整理以前の上二番町および五番町にあたります。「八重洲」という地名は、現在では東京駅東側の中央区の町名ですが、1929年までは東京駅西側（現在の丸の内二丁目）の町名でした。

旧町名の特徴

関東大震災以前の旧町名は、江戸時代からの名称を引き継ぐものが多かった一方で、明治時代初期に新設された町名も存在しました。「○○屋敷」「○○町代地」「○○寺門前」といった旧幕府時代の伝統を引き継ぐ小規模な町は、1869年（明治2年）前後に合併され、新たな町名が付けられました。また、1872年（明治5年）には、武家地や寺社地など、それまで町名のなかった土地に新たに町名が付けられました。これらの町名設置は、主に戸籍整備の必要性から実施されました。

千代田区の町名の現状

千代田区内には、住居表示が未整備の地域が多く残っています。しかし、1929年から1938年にかけて、麹町区のほぼ全域と神田区の大部分において町名整理が行われています。神田地区（旧神田区）では、神田川以北の全域と、神田駅以東の一部に町名整理未実施地区が残っていましたが、その一部は1964年（昭和39年）から1966年（昭和41年）にかけての住居表示実施によって廃止されました。

旧麹町区の町名

麹町区成立時（1878年）の町丁数は79でした。その後、1889年（明治22年）の市制町村制施行時までに、町名の成立・廃止がありました。東代官町と西代官町が合併して代官町となり、麹町十一・十二・十三丁目は四谷区に編入されました。これにより、最終的な町丁数は75となりました。このうち、河岸地名2箇所を含む77町丁が記録されています。

旧神田区の町名

神田区成立時（1878年）の町丁数は127でした。翌1879年（明治12年）に神田豊島町一〜三丁目の「丁目」が廃止されましたが、昭和初期まで町丁数の変更はありませんでした。河岸地名9箇所を含む134町丁が記録されています。

神田を冠称する町名については、1911年（明治44年）に一旦冠称が廃止されました。しかし、1947年（昭和22年）の千代田区成立時に存続していたものは、再び「神田」を冠称するようになりました。

隣接区からの編入

区境の変更に伴い、麹町区や日本橋区から神田区に編入された区域があります。麹町区飯田町の一部は西神田に、日本橋区馬喰町四丁目は東神田に編入されました。

住居表示実施直前の町名

1923年（大正12年）の関東大震災からの復興に際し、東京市では区画整理と町名改正が実施されました。千代田区の前身である麹町区と神田区でも、昭和時代初期に大幅な町名改正が行われました。その後、1962年に「住居表示に関する法律」が施行され、同法に基づく住居表示の実施によって、千代田区の町名は再度変更されています。

旧麹町区の区域では、1966年から住居表示整備が開始されましたが、現在でも一部に未実施地区が残っています。旧神田区の区域では、1964年から住居表示整備が開始されました。2011年現在、千代田区の住居表示実施率は面積ベースで74%であり、住居表示未実施の地区が多く残っています。

昭和初期の町名改正

旧神田区では、震災復興後の区画整理に伴い、1933年から1935年にかけて町名改正が実施されました。神田川以南かつ山手線以西の区域では、全域で町名改正が行われ、古い町名の多くが消滅しました。一方、神田川以北と神田駅東側の区域では、旧来の町名が残りました。この町名改正により、神田区の町丁数は127から84に減少しました。

この際、鍛冶町、小川町、須田町などは町名としては残りましたが、近隣の小規模な町を合併して町域が拡大しました。

「神田」の冠称について

昭和時代初期の町名改正で新設された町名は、当初は「神田」を冠称していませんでしたが、1947年の神田区廃止・千代田区成立以降は、「神田」を冠称するようになりました。ただし、西神田、東神田などの一部の町は例外です。

町名改正の対象外となった町名

1963年時点で存続していた、昭和初期の町名改正の対象外となった町名として、神田元久右衛門町、神田八名川町、神田餌鳥町、神田和泉町、神田佐久間町などがあります。これらの町名の中には、現在も存続しているものもありますが、多くは1964年以降の住居表示実施で廃止されました。

千代田区の現行町名

千代田区の現行町名（2012年1月現在）は、住居表示実施済みの地区については、当該住居表示実施直前の旧町名を基にしています。千代田区と中央区の境界には、一部未定部分があり、その部分の住所は便宜上、中央区の地名で表示されています。

まとめ

千代田区の町名は、明治時代以降、幾度となく変遷を重ねてきました。この記事では、その変遷を詳細に解説し、千代田区の歴史と町名のルーツを明らかにしました。これらの情報は、千代田区の過去と現在を理解する上で、非常に重要な資料となるでしょう。

もう一度検索