千葉さな子

千葉さな子：幕末の女剣士、その生涯

千葉さな子（ちば さなこ）は、天保9年（1838年）に生まれ、明治29年（1896年）に没した、幕末から明治にかけての女性です。彼女は北辰一刀流桶町千葉道場の主、千葉定吉の二女として生まれました。

剣の道と美貌

さな子は幼少の頃から剣術の腕を磨き、特に小太刀の腕は10代で免許皆伝に達したと言われています。北辰一刀流の長刀の師範も務めました。その美貌は「千葉の鬼小町」や「小千葉小町」と称されるほどでした。宇和島藩主・伊達宗城の記録には、19歳のさな子が伊達家の姫君の剣術指南役を務め、後に藩主となる伊達宗徳に立ち合いで勝利したことが記されています。宗城はさな子を「両御殿中、第一ニテ」（二つの伊達江戸屋敷に出入りする女性の中で一番美人である）と評しました。

坂本龍馬との関係

さな子は、後に幕末の英雄となる坂本龍馬と知り合い、さな子の回想によると、安政5年（1858年）頃に婚約したとされています。龍馬は姉に宛てた手紙の中で、「（佐那は）今年26歳で、馬によく乗り、剣もよほど強く、長刀もできて、力は並の男よりも強く、顔は平井（加尾）よりも少しよい」とさな子を評しています。父・定吉は、結婚のために坂本家の紋付を仕立てましたが、龍馬が帰国した後は疎遠となり、後に龍馬の死を知ると、形見としてこの紋付の片袖をとっておいたと伝えられています。

維新後の歩み

明治維新後、兄・重太郎が官吏として京都へ赴任する際、さな子も同行しました。その後、学習院女子部（後の女子学習院）で舎監として勤務。その後、東京千住で家伝の灸を生業とする千葉灸冶院を開業しました。兄・重太郎の死や養子にした甥の早世など、悲しい出来事も経験しましたが、晩年は千住で灸師として過ごし、59歳で生涯を終えました。

結婚と晩年

龍馬の死後も彼を思い、生涯独身を貫いたと伝えられていましたが、2010年に明治7年（1874年）に元鳥取藩士・山口菊次郎と結婚したとする新聞記事が発見されました。記事によると、山口菊次郎とは数年で離縁し、その後は独身であったとされています。また、司馬遼太郎の紀行文集には、晩年を甲府で過ごしたとする記述もあります。

墓所

さな子は東京谷中に土葬されましたが、身寄りがなく無縁仏となるところを、山梨県の自由民権運動家・小田切謙明の妻・豊次が哀れみ、小田切家の墓地のある甲府市の清運寺に墓碑が建てられました。墓石には「坂本龍馬室」と刻まれています。戦後、東京都立八柱霊園の無縁塚に合葬されましたが、2016年に妹の子孫によって改葬され、千葉家縁の練馬区にある仁寿院にて法要が営まれました。

坂本龍馬との恋

龍馬との恋については、坂崎紫瀾の小説『汗血千里駒』に描かれています。龍馬の許婚として、坂本家からもある程度認識されていたようです。龍馬が実家に宛てた手紙には、さな子への好意を示す表現が使われています。龍馬の妻おりょうによるさな子評が悪意に満ちていることから、龍馬とさな子の関係は深いものだったと推測されています。

その他

さな子を描いたとされる錦絵が発見されたことが報じられましたが、後に千葉周作の孫であることが判明しました。

千葉さな子が登場する作品

多くの小説、漫画、テレビドラマ、アニメ、舞台作品で、千葉さな子が描かれています。彼女の魅力的な人物像が、多くの人々に愛され続けています。

小説：坂崎紫瀾『汗血千里駒』、司馬遼太郎『竜馬がゆく』など
漫画：里中満智子『花影』、武田鉄矢・小山ゆう『お〜い!竜馬』など
テレビドラマ：NHK大河ドラマ『竜馬がゆく』、『龍馬伝』など
テレビアニメ：『お～い!竜馬』、『ねこねこ日本史』など
舞台：神田時来組『改訂版！！そして龍馬は殺された』、企画演劇集団ボクラ団義『耳があるなら蒼に聞け 〜龍馬と十四人の志士〜』など
楽曲：藍坊主『鞄の中、心の中』
* ゲーム：英傑大戦、ライズオブザローニン

千葉さな子は、剣術に秀でただけでなく、その美しい容姿と、龍馬を想い続けた一途な心で、多くの人々を魅了する女性でした。彼女の波乱に満ちた生涯は、今もなお、様々な作品を通して語り継がれています。

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