南洋拓殖

南洋拓殖株式会社：太平洋戦争下の南洋開発を担った国策会社

南洋拓殖株式会社（以下、南拓）は、大日本帝国の委任統治領であった南洋群島において、ミクロネシア地域開発の中核を担った国策会社でした。昭和11年（1936年）、『南洋群島開発十ヵ年計画』に基づき設立され、昭和20年（1945年）の終戦と共に解散するまで、南洋地域の経済発展に大きな影響を与えました。

設立と目的

南拓は、それまでの南洋開発が製糖業に偏っていた状況を打破し、より広範な産業振興と移民政策を推進するため設立されました。本社はパラオ諸島のコロール島に、東京事務所は東京に置かれ、2000万円の資本金（1939年時点）でスタートしました。最大の株主は南洋庁であり、国策会社としての性格が強く、拓務大臣（後に大東亜大臣）の管轄下に置かれていました。

『南洋群島開発十ヵ年計画』は、外南洋（日本領以外の南洋地域）への経済的進出、移民による拓殖事業の推進、そして熱帯産業の実験場としての南洋群島の活用を掲げていました。南拓はこれらの計画を着実に実行していく重要な役割を担っていたのです。設立委員会は昭和11年7月29日に開催され、同年11月27日に正式に設立されました。

事業内容

南拓の事業内容は多岐に渡りました。主な事業としては、以下のものが挙げられます。

拓殖事業の促進: 移民の導入、南方開拓地の農業指導など、積極的に南洋への移住を促進しました。埼玉県与野町（現さいたま市中央区）の農民講道館やヤップ島の道場において、移民向けの教育・訓練が行われていました。
資金供給: 南洋に進出する企業への資金援助を行い、地域経済の発展を支援しました。南洋群島唯一の日本銀行代理店としての機能も果たしていました。
資源開発: 南洋庁から引き継いだ燐鉱石やボーキサイトの採掘事業を、ファイス島、エボン島、ソンソロール島、アンガウル島、バナバ島などで展開しました。
投資: 現地では農業、鉱工業、水産業、運輸業、新聞社など幅広い分野への投資を行い、子会社設立も行いました。
* 調査: 南洋地域の政治・経済に関する調査を行い、『南洋拓殖（株）調査資料』としてまとめました。

太平洋戦争開戦後は、軍の要請により軍事施設建設などの「特殊事業」にも関与するようになりました。オランダ領東インドやニューブリテン島などにおける軍からの受託業務が中心となり、当初の計画とは異なる方向へと事業がシフトしていったのです。

経営陣と主要人物

南拓の経営陣には、軍関係者や財界の有力者などが名を連ねています。社長には深尾隆太郎氏（1936年～1941年）、大志摩孫四郎氏（1944年6月まで）、下田文一氏（1944年6月～解散まで）らが就任しました。その他、長谷川清氏、豊田副武氏ら海軍軍人も設立委員として関わっています。

解散

太平洋戦争の終戦後、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）の指示により、昭和20年9月30日付で閉鎖機関に指定され、解散しました。南洋開発という壮大な計画を担った南拓は、わずか9年の歴史に幕を閉じました。その功績と失敗は、現代においても研究対象となっています。

関連事項

南洋拓殖株式会社の活動を知る上で、関連する企業や人物について理解することも重要です。南洋興発株式会社、南洋貿易、日本真珠などは、南拓と深く関わりのあった組織です。また、南拓の社長や役員を務めた人物たちの経歴も、その活動内容を知る上で重要な手がかりとなります。

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