南部広矛

南部広矛（なんぶ ひろほこ）は、文政6年（1823年）に越前国足羽郡福井（現在の福井県福井市）で、福井藩の下士である南部彦助の息子として生まれました。幼少の頃から学問に励み、橘曙覧や河津直入に師事し、和歌を嗜むなど、豊かな教養を身につけました。

嘉永3年（1850年）に家督を相続し、福井藩の主計吏として藩政に携わりました。安政3年（1856年）には御勝手役見習に登用され、新番格へと昇進。安政6年（1859年）からは江戸勤務となり、大坂や京都へも出張するなど、多忙な日々を送りました。元治元年（1864年）には第一次長州征討に従軍し、幕府側の兵士として戦いました。

戊辰戦争が勃発すると、慶応4年（1868年）に新政府軍に加わり、北陸道鎮撫使・会計方御用取扱として従軍。奥羽征討越後口進撃軍の会計方として各地を転戦し、民政掛も兼務しました。戦後は、徴士・越後府権判事、民部官庶務司判事・出納取締雑事掛、関八州迎察、民部大録・出納庶務掛などを歴任し、新政府の財政を支えました。

明治2年（1869年）には柏崎県大参事に就任し、地方行政に手腕を発揮しました。明治5年（1872年）には静岡県参事に転任し、1874年までその職を務めました。その後、大蔵省検査助に就任しましたが、1877年に検査寮が廃止されたため退官しました。

南部広矛は、多岐にわたる分野で才能を発揮した人物でした。藩政改革や新政府の財政基盤の確立に貢献しただけでなく、和歌を通じて豊かな精神性を育みました。また、多くの子を育て、二男の南部球吾は鉱山技術者、工学博士として、三男の寺島小五郎は司法官として、四男の横山彦六は陸軍中将として、それぞれ社会に貢献しました。

大正元年（1912年）8月6日、南部広矛は88歳でその生涯を閉じました。その功績は、芳賀矢一によって『南部広矛翁 : 伝記及び紀行』としてまとめられ、後世に伝えられています。

参考文献
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
福井新聞社編『福井人物風土記 : ふくい百年の群像 続』福井県教科書供給所、1973年。
安岡昭男編『幕末維新大人名事典』下巻、新人物往来社、2010年。
「南部広矛特旨叙位ノ件」 アジア歴史資料センター Ref.A12090111400

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