南部縦貫鉄道線

南部縦貫鉄道線：幻の鉄路とその記憶

南部縦貫鉄道線は、かつて青森県上北郡の野辺地駅から七戸駅を結んでいた、20.9kmの鉄道路線です。この路線は、地域開発を目的として設立された南部縦貫鉄道によって運営されていました。

開業と挫折

1962年、沿線の砂鉄輸送を目的とした国策会社「むつ製鉄」の支援により開業しました。しかし、輸入鉄鉱石の価格下落により砂鉄輸送計画は頓挫。旅客輸送も振るわず、経営はすぐに立ち行かなくなりました。1966年には会社更生法の適用を申請し、倒産という憂き目に遭います。

苦難の道のり

鉄道事業の赤字を補うため、自治体から清掃事業や給食調理を受託し、何とか路線を維持しました。背景には、東北新幹線の延伸時に七戸駅が設置される計画があり、新幹線アクセスによる経営改善への期待がありました。

1981年には、国鉄大畑線の廃止問題に際し、上北・下北一貫の新幹線アクセス構想を打ち立て、大畑線とセットで引き受けに名乗りをあげます。しかし、大畑線は地元バス会社に引き継がれ、新幹線計画も七戸を経由しないルートで決定されます。これにより、経営改善の望みは絶たれてしまいます。

休止と廃止

1995年、国鉄清算事業団から旧東北本線の路盤の買い取りを求められ、資金難からこれを拒否。1997年に全線が休止されます。その後、自治体との調停で路盤は買い取られたものの、荒廃した施設の復旧は困難を極め、2002年に正式に廃止されました。奇しくも、東北新幹線がフル規格で建設されることになったのは、廃止後の1998年1月でした。

路線データ

路線距離：20.9km
軌間：1067mm
駅数：11駅
複線区間：なし（全線単線）
電化区間：なし（全線非電化）
閉塞方式：票券閉塞式

歴史

1953年：鉄道免許取得、南部縦貫鉄道設立
1962年：千曳 - 七戸間が開業
1966年：会社更生法適用を申請
1968年：十勝沖地震で全線不通、後に復旧
1984年：貨物営業廃止
1997年：全線休止
2002年：全線廃止

運行形態

全線で気動車（レールバス・キハ10）による普通列車のみが運行されていました。かつては貨物列車も運行されていましたが、1984年に廃止。最盛期には1日7往復の列車が運行されていましたが、最終的には5往復に減少しました。列車交換は、かつては天間林駅で行われていましたが、後に廃止されています。

駅一覧

全駅が青森県上北郡内にありました。

野辺地駅
西千曳駅
坪川駅
後平駅
天間林駅
盛田牧場前駅
七戸駅

車両

気動車
キハ101・キハ102：開業時からの主力車両
キハ103：元筑波鉄道の車両
キハ104：元国鉄の車両
ディーゼル機関車
D45形：貨物輸送に使用
DC25形：元羽後交通の車両
DB11形：モーターカー、除雪車として使用

未成区間

七戸駅から十和田市駅へ至る延伸計画がありましたが、実現には至りませんでした。

メディアへの登場

1990年代のテレビCMに登場したり、地元のテレビ番組で特集されたりするなど、メディアにも取り上げられていました。

現在の姿

休止・廃止後、代替交通は並行する路線バスが担っています。旧七戸駅構内では、当時の車両が動態保存されており、毎年ゴールデンウィークには体験乗車イベントが開催されています。南部縦貫鉄道の会社は、社名変更を経て、受託事業を行う会社として存続しています。

南部縦貫鉄道線は、その短い歴史の中で、地域開発の夢と挫折、そして存続への苦闘を物語る路線でした。その姿は失われましたが、今もなお、その記憶は地域の人々の心に残り続けています。

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