受信障害対策中継放送(ギャップフィラー)
受信障害対策中継放送、通称ギャップフィラーは、
電波の受信が困難な地域において、地上
基幹放送を再送信するシステムです。
電波法によって定義されており、放送事業者以外の地方自治体や共同受信組合などが、難視聴地域でのテレビやラジオの視聴を可能にするために設置します。
定義
電波法第5条第5号において、受信障害対策中継放送は、広範囲にわたる受信障害が発生している地上
基幹放送を、その内容を変更せずに
再放送する
基幹放送と定義されています。これは、既存の放送事業者(NHKや民放など)以外の者が、特定の地域における受信障害を解消するために行うものです。
概要
ギャップフィラーは、主に以下の目的で使用されます。
難視聴地域の解消: 山間部、高層建築物の陰、地下街など、電波が届きにくい地域での受信を可能にします。
既存放送の補完: 地上波放送の
電波が届きにくい場所で、既存の放送を再送信することで、視聴環境を向上させます。
地域密着型の放送: 地方自治体や共同受信組合などが主体となり、地域の実情に合わせた放送を提供します。
ギャップフィラーの設置者は、既存の放送事業者ではなく、地方自治体や共同受信組合などです。これらの団体が地上[[基幹放送局]]の免許を取得し、特定地上基幹放送事業者として運営を行います。放送される内容は、元の放送局から変更されることはありません。また、受信障害対策中継放送は、放送法により「受信障害対策中継放送を行う者が受信した基幹放送事業者の放送とみなす」とされており、有料放送は行われず、基本的に無料で視聴できます。
技術的特徴
ギャップフィラーは、小規模な中継局を用いて、受信した放送波をそのまま再送信します。技術的には、有線テレビジョン放送(CATV)における同時再放送を無線で行うものと考えることができます。
送信機: 出力が小さい(
空中線電力0.05W以下)
送信機が使用されることが多く、これは
技術基準適合証明の対象となっています。特にCATV網接続型は記号UUで示されます。また、
空中線電力0.25W以下のFM放送用
送信機も
技術基準適合証明の対象で、記号はGFで示されます。
免許手続き: 適合表示無線設備を使用することで、免許手続きが簡略化され、予備免許や落成検査が不要となります。
管理: 一定の条件を満たせば、
無線従事者による管理も不要で、簡易な操作で運用が可能です。
沿革
ギャップフィラーの制度は、アナログ放送時代から存在しましたが、デジタル化に伴い、その役割はさらに重要になりました。
アナログ時代: 当初は、高層建築物による受信障害対策が主な目的で、原因者負担で開設されていました。しかし、設置には専門的な知識や設備が必要で、普及は進みませんでした。
デジタル化: デジタル放送への移行に伴い、対象地域が拡大され、規制緩和が進みました。これにより、山間地域や
地下街など、様々な場所で受信障害対策が可能になりました。さらに、国からの補助金制度も整備され、普及が促進されました。
コミュニティ放送への適用: 東日本大震災以降、ラジオネットワークの強靭化が求められるようになり、コミュニティ放送の中継局にもこの制度が適用されるようになりました。
FM放送への展開
FM放送においても、ギャップフィラーの導入が進んでいます。特に、東日本大震災以降、ラジオネットワークの強靭化が求められるようになり、コミュニティ放送の中継局にこの制度が適用されました。当初は、技術的な制約がありましたが、技術基準適合証明の対象となる送信機が登場したことで、導入が容易になりました。
ギャップフィラー事業者
ギャップフィラーを設置・運営する事業者は、多岐にわたります。地方自治体、共同受信組合、その他の団体などが、それぞれの地域や状況に合わせて、このシステムを活用しています。
テレビジョン放送: 北海道から沖縄まで、多くの
市町村や共同受信組合がギャップフィラーを設置しています。
超短波放送(FM放送): 主にコミュニティ放送局の中継局として利用されています。
ギャップフィラーの今後
ギャップフィラーは、今後も情報格差の解消や災害時における情報伝達の手段として、その役割が重要になると考えられます。技術の進歩や制度の整備により、より多くの地域で安定した放送受信環境が実現することが期待されます。
その他
過去には、衛星を利用したマルチメディア放送(モバHO!)においても、不感地帯解消のためにギャップフィラーが利用されていましたが、これは現在の制度における受信障害対策中継放送とは異なります。
関連項目
中継局
FM補完[[中継局]]
ミニサテライト局
放送波遮蔽対策推進協会
外部リンク
総務省
国立国会図書館Web Archiving Project
日本CATV技術協会