古文銭

古文銭とは

古文銭（こぶんせん、こもんせん）とは、中国の秦代から隋代にかけて発行された銭貨の総称です。これらの銭貨は、その表面に古い文字（主に篆書）が刻まれていることから、このように呼ばれています。古文銭という用語は、古くから存在しており、『珍銭奇品図録』や『新校正孔方図鑑』などの文献にも見られます。

古文銭の定義

本来、「文」という漢字には「円形方孔の銭貨」という意味があり、古文銭という用語も、秦代から隋代にかけて発行された円形方孔の銭貨に限って使用されていました。しかし、1997年の文献によると、現在では先秦の円形円孔の銭貨も古文銭に含めることが多くなっています。実際に、2009年に発行された『日本貨幣カタログ2010年版』では、周代から隋代までの銭貨を古文銭として扱っています。

古文銭は、年代的には古圜法の次に発行されたものです。唐の武徳4年（621年）に開元通宝が発行されると、それ以降の銭貨は通常、古文銭とは呼ばれません（平銭と呼ぶ文献もあります）。

日本への渡来と流通

半両銭、五銖銭、貨泉（紀元前221年 - 585年）など、古文銭の一部は渡来銭として日本国内でも流通しました。16世紀には、中国から日本への主要な輸出品の一つとして「古文銭」が挙げられる史料も存在します。

厭勝銭としての側面

また、前漢の五銖銭の中には吉祥語が刻まれたものがあったり、朝鮮半島や日本では五銖銭が副葬品として使用されるなど、厭勝銭（魔除けや縁起物）としての側面も持っていました。

古文銭と同形式の銭貨

唐以降の時代でも、五代十国時代の銭貨の一部には、古文銭と同形式のものが見られます。例えば、南漢の「五五」や桀燕の「貨布」・「五銖」などが挙げられます。

古文銭の種類

古文銭には、様々な種類が存在します。以下に、代表的な古文銭をいくつか紹介します。

半両銭：秦代に発行された円形方孔の銭貨。
五銖銭：前漢から後漢、さらに三国時代、南北朝時代と長きにわたって発行された銭貨。
貨泉：新の時代に発行された銭貨。
布銭：春秋戦国時代に発行された農具の形をした銭貨。
刀銭：春秋戦国時代に発行された刀の形をした銭貨。

これらの銭貨は、国家が正式に鋳造・発行したものだけでなく、民間で私的に製造されたものも含まれます。

円形方孔以外の銅貨

古文銭の時代には、円形方孔以外の銅貨も発行されています。これらの銅貨は、形状や文字が独特で、古文銭とは異なる特徴を持っています。例えば、布銭や刀銭などがあります。

まとめ

古文銭は、中国の古代貨幣史を語る上で欠かせない存在です。その多様な種類や歴史的背景は、貨幣史だけでなく、当時の社会や文化を知る上で重要な手がかりとなります。また、日本にも渡来し、流通した歴史から、日本の文化にも影響を与えたと考えられています。

参考文献

日本貨幣商協同組合 編『日本貨幣カタログ2010年版』日本貨幣商協同組合、2009年。
今泉忠左衛門 編『銭貨年表並貨幣索引』今泉忠左衛門、1930年。
郡司勇夫 編『日本貨幣図鑑』東洋経済新報社、1981年。
大鎌淳正『改訂増補古銭語事典』国書刊行会、1997年。
諸橋轍次『大漢和辞典』 大修館書店、1984年。
日本国語大辞典 第二版 編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編『日本国語大辞典 第二版』 小学館、2001年。

外部リンク

初心者の為の古文銭

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