台湾鉄路管理局DR2800型気動車

台湾鉄路管理局DR2800型気動車

台湾鉄路管理局（台鉄）のDR2800型気動車は、東部幹線の輸送力向上とサービスの質的向上を目的に導入された特急形ディーゼルカーです。1980年代初頭に東急車輛製造で製造され、非電化区間における最優等列車「自強号」として活躍しました。

登場の背景

1980年代、台湾では東部幹線の整備が進められ、北廻線の開通や宜蘭線複線化、花東線の改軌工事などが行われました。しかし、当時、東部幹線には西部幹線を走る電車「自強号」のような快適な優等列車が存在せず、客車列車「莒光号」やDR2700型による「柴対快」が運行されていました。

「莒光号」は空調完備でしたが速度が遅く、「柴対快」は高速でしたが非冷房であり、東部幹線の旅客サービスは西部幹線と比較して見劣りする状況でした。そこで、東部幹線にも「自強号」を導入する計画が持ち上がり、DR2700型の実績を踏まえ、DR2800型が開発されました。

車両概要

DR2800型は、両端に動力車であるDR2800型、中間車に電源用発電機を搭載したDR2850型を連結した3両編成を基本とし、最大5ユニット15両で運行されました。

車体

車体は、台湾の高温多湿な気候に対応するためステンレス製です。前面は警戒色塗装で遠方からの視認性を高め、この塗装を窓の上下に回りこませることでデザインのアクセントとしています。前照灯は旋回式で、運転中は常に点灯していました。

客用扉は片側1箇所で、手動式の折戸です。運行開始当初はタブレット閉塞の区間が残っていたため、運転室にはタブレットバンパーが取り付けられていました。

客室

客室は、「自強号」にふさわしい快適な設備が整えられました。座席は回転式リクライニングシートで、モケットは3色を使い分けています。客室内に立ち上がるラジエーターの配管やエンジンの排気管は、「月洞門」と呼ばれる円形の仕切りで覆われ、デザイン性も考慮されました。内装部品にはステンレスが多用されています。

乗務するスチュワーデス用の控え室や、給茶機が各車両に設置され、サービス面も充実していました。空調装置は、客室内に機器室を設け、その中に台湾製の床置き型空調装置が設置されました。

主要機器

エンジンは、走行用と発電用ともにカミンズ製NT855Rの水平型（出力355HP）を各車両に1基ずつ搭載しました。車両で使用する電力は、DR2850型の発電用エンジンで駆動される発電機によって供給されます。空調用には3相交流440V、蛍光灯や換気扇用には交流100V、制御電源や蓄電池用には直流24Vの電源を供給しました。

屋根上にはエンジン冷却用のラジエーターが設置され、冷却ファンは油圧モーターで駆動し、冷却水の温度に応じて回転数が自動制御されました。台車は東急車輛製造のTS124形空気ばね台車で、基礎ブレーキ装置は両抱え式です。DR2800型は、台鉄のディーゼルカーで初の空気ばね式台車を採用した車両でもあります。

運用

DR2800型は全車両が花蓮機務段に配置され、1982年6月1日から台北駅 - 花蓮駅間の「自強号」として運行を開始しました。それまで「対号特快」が結んでいた同区間をノンストップで運行し、3時間15分で結びました。同年9月30日には、ダイヤ改正で「自強号」の運転区間が台東駅まで延長され、台北と台東間は6時間13分で結ばれるようになり、日帰りでの移動も可能となりました。

DR2800型は高性能で加速性能に優れていたため、しばしば交換可能駅で早着することもあったといいます。当初10編成が導入されましたが、需要に対応するため1984年にはさらに5編成が追加導入され、計15編成45両となりました。

その後も東部幹線「自強号」の主力として運用されましたが、車両の老朽化が進んだため、隆成発鉄工廠で更新工事を受け、DR3100型と同等のエンジンに換装されました。しかし、2023年4月25日に定期運用を終了しました。

脚注

注釈

なし

出典

なし

関連項目

自強号
台湾鉄路管理局DR2900型気動車
台湾鉄路管理局DR3000型気動車
台湾鉄路管理局DR3100型気動車

参考文献

多田等「台湾鉄路管理局DR2800形車両を製造」『鉄道ジャーナル』第189号、鉄道ジャーナル社、1982年11月、116-118頁。
徳田耕一「自強號特快1051次 疾走」『鉄道ジャーナル』第193号、鉄道ジャーナル社、1983年3月、126-130頁。

外部リンク

* 台湾鉄路管理局鉄道博物館網 （繁体字中国語）

もう一度検索