吾粲

吾粲（ご さん）

吾粲（ご さん、字は孔休）は、中国三国時代の呉の武将・政治家であり、その生涯は激動に満ちています。揚州呉郡烏程県（現在の浙江省湖州市呉興区）の出身で、寒門から身を起こし、呉の国政に深く関わりました。

生い立ちと初期の経歴

幼い頃から九卿・宰相の相を持つと言われた吾粲は、殷礼らと共に顧邵に才能を認められ、その友人となったことで名を知られるようになります。孫河が烏程県令であった頃に官吏として仕え、孫河の推挙で曲阿県丞、そして長史へと昇進し、優れた治績を挙げました。この頃、同郷の陸遜や卜静と並び称されるほどの評判を得たと言われています。

孫権が車騎将軍となると、その幕府に招かれて主簿として仕え、後に山陰県令として地方へ赴任、その後中央に戻り参軍校尉に昇進しました。

洞口の戦いでの活躍

黄武元年（222年）、魏が呉に侵攻すると、吾粲は呂範や賀斉らと共に洞口に出陣し、曹休率いる魏軍を防ぐ重要な役割を果たしました。この戦いにおいて、暴風によって船のもやい綱が切れ、船が敵陣に流されたり、沈没するなどの被害が発生。多くの兵士が溺れる中、他の船が転覆を恐れて救助を拒む状況下で、吾粲は黄淵と共に危険を顧みず救助活動を行い、百人以上の兵士を救いました。この勇敢な行動は、彼の人間性を強く表しています。

その後

その後、会稽太守に任命された吾粲は、無位無官であった謝譚という人物を功曹として招聘しようと試みます。謝譚がこれを断ると、応龍や鳳凰に例えてまで仕官を促しました。また、志願兵を募って部隊を編成し、昭義中郎将として呂岱と共に山越討伐に参加。その後、中央に戻り屯騎校尉・少府を歴任しました。

二宮事件と最期

赤烏6年（243年）、太子の孫和の教育係である太子太傅の闞沢と薛綜が相次いで亡くなると、吾粲が後任となります。しかし、この頃から孫和と弟の孫覇の間で後継者争いが激化（二宮事件）。吾粲は孫和の後見人という立場から、この争いに深く関わることになります。吾粲は孫権に対し、嫡庶の区別を明確にし、孫和の正統性を主張。また、孫覇やその派閥に属する楊竺を中央から遠ざけるよう進言しました。さらに、陸遜に協力を求め、陸遜も孫権に諫言の手紙を送りました。

しかし、これらの行動が孫覇や楊竺らの反発を招き、彼らから讒言されることになります。孫権は吾粲らの行動に激怒し、陸遜を譴責すると共に、吾粲を投獄し処刑しました。吾粲の死は、彼の正義感と、それ故の悲劇的な結末を示しています。

陳寿は、吾粲について「困難な時勢の中、正義を守ろうとして身を滅ぼした。悲しいことである」と評しており、その死を悼んでいます。吾粲の生涯は、三国時代の権力闘争の激しさと、その中で信念を貫くことの難しさを示すものと言えるでしょう。

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