賀斉

賀斉（が せい）

賀斉（が せい）は、中国後漢末期から三国時代の呉の武将です。字は公苗（こうびょう）。揚州会稽郡山陰県（現在の浙江省紹興市）の出身。

生涯

若き日

賀斉の家系は、前漢の慶普まで遡ることができます。伯父の慶純は学者として名高く、安帝の時代に侍中・江夏太守を歴任しました。慶純は安帝の父の名を避けて賀氏に改姓しています。賀斉の父は永寧県長を務めました。

呉への仕官と山越討伐

建安元年（196年）、孫策が会稽郡を制圧すると、賀斉はその才能を認められ孝廉に推挙されます。その後、王朗軍の残党である商升が反乱を起こすと、賀斉は永寧県長に任命され、討伐の任に当たります。商升が降伏を申し出てきますが、内紛により殺害され、主戦派が主導権を握ります。賀斉は、兵力の少なさを理由に討伐をせず、山越を扇動して内紛を激化させました。そして反乱軍の力が弱まったところを見計らい、これを討伐し降伏させました。

建安8年（203年）には、建安・漢興・南平で反乱が起こったため、賀斉は建安に軍を進駐させ、都尉の役所を設置します。会稽郡の各県から兵を徴発し軍団を組織、各県長を指揮官として賀斉の指揮下に置きました。賀斉はまず漢興の反乱軍を討伐しようとしますが、兵力が少ないため、松陽県長の丁蕃に余汗の守備を命じました。しかし丁蕃は賀斉の命令を拒否したため、賀斉は丁蕃を斬り、軍を掌握します。そして漢興の反乱軍を討伐し、殲滅または降伏させました。その後、大潭の反乱軍も討伐し、反乱の首謀者を捕らえ、6千もの首を挙げました。戦後、行政機構を再編し、1万の兵を軍団に加えました。これらの功績により、平東校尉に任命されます。

建安10年（205年）には、会稽南部から上饒を討伐し、建平県を立てました。

丹陽討伐と新都郡太守

建安13年（208年）、威武中郎将に昇進し、丹陽・黟・歙を討伐します。武強・葉郷・東陽・豊浦を降伏させ、葉郷を昇格させて始新県を立てました。その後、歙と黟の反乱軍が安勒山・烏聊山・林歴山に立て籠もりますが、賀斉は奇襲をかけてこれを鎮圧し、多数の捕虜と7千の首級を得ました。そして、歙県を分割して始新・新定・黎陽・休陽・黟・歙の6つの県を立てるべきだと進言し、孫権はこれを受け入れ、歙県を分割して新都郡を置き、賀斉をその太守に任命しました。

建安16年（211年）、呉郡の余杭で郎稚が反乱を起こすと、賀斉は郡の兵を率いてこれを鎮圧し、余杭を分割して臨水県を立てさせました。

合肥の戦いと濡須口の戦い

建安20年（215年）の合肥の戦いでは、張遼の奇襲により徐盛が負傷しますが、賀斉と潘璋が救援に駆けつけ、張遼を撤退させました。逍遥津からの撤退戦では、賀斉は3千の水軍を率いて津南に陣を敷き、殿軍部隊を待ち受けました。そして、張遼の追撃から孫権を救出するのに貢献しました。

建安21年（216年）の濡須口の戦いでは、尤突が曹操の印綬を受け反乱を起こすと、陸遜と共に討伐し、数千人を斬って反乱を鎮圧しました。これにより丹陽の三県も降伏し、降伏者の中から8千人の精鋭を募り、孫権軍に加えました。これらの功績により、安東将軍・山陰侯に任命され、長江を守備し、扶州から皖までの地域の守備を任されました。

洞口の戦いと晋宗討伐

黄武元年（222年）、魏が三方面から侵攻してくると、賀斉は新市の防備を任され、洞口方面から侵攻してきた曹休の攻撃を回避することができました。呂範率いる軍が暴風により大損害を受けたのに対し、賀斉の軍は無傷でした。その後、賀斉は曹休らを打ち破り、その威容をもって魏軍を退却させました。この功績により、後将軍に昇進し、仮節を与えられ徐州牧となりました。

黄武2年（223年）には、魏に寝返った晋宗を討伐し、生け捕りにして蘄春郡を占領しました。

黄武6年（227年）に死去しました。

人物

非常に派手好きな性格で知られ、常に上質で豪華な武具を身に着けて戦に臨みました。配下の軍装も豪奢に飾り立て、その軍は遠目にも判別できたといいます。洞口の戦いでは、武器甲冑や軍用機具はとびきり精巧で上等な物を揃え、船には彫刻・彩色を施し透かし彫りで飾り付け、青い傘を立て赤い幔幕を垂らし、大小の楯や矛には花文様を鮮やかに描き、弓や矢はすべて最高の材質のものを用い、蒙衝や戦艦の類いは遠くから見ると、あたかも山のようであったといわれます。その威容は敵を畏怖させました。

逸話

賀斉が山越の反徒を討伐した際、反徒の中に禁術を使う者がおり、官軍は刀剣を抜くことができず、弓矢を放っても戻ってくるという状況でした。賀斉は、金属製の武器が封じられるなら、木製の武器は封じられないと考え、木製の棍棒を大量に作成させ、精鋭兵士に持たせて突撃させました。反徒たちは禁術に頼っていたため備えがなく、棍棒による攻撃で多数が打ち倒されました。（『抱朴子』）

孫権は賀斉を非常に信頼しており、郡に帰還する際には、都の郊外まで見送り、馬車への同乗を許可しました。また、賀斉の奢侈な服装について、他人から批判を受けた際も、賀斉の功績を評価し、容認しました。（『江表伝』）

三国志演義

小説『三国志演義』には登場しません。

家系図

父：賀輔
子：賀達、賀景
孫：賀質、賀邵
曾孫：賀循
* 玄孫：賀隰

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