内史

内史（ないし）

内史は、古代中国に存在した官職であり、主に首都とその周辺地域を管轄していました。

起源と変遷

内史の起源は周の時代に遡ります。『漢書』百官公卿表によると、秦や前漢もこの制度を継承し、首都近辺の統治を担わせました。内史は県を統治するという点で郡と同様の役割を果たしましたが、首都に役所が置かれ、人口が多い地域を管轄していたため、前漢においては中央官庁の一つとして重要な地位を占めていました。官秩は二千石でした。

秦が滅亡し、項羽が諸侯を立てると、秦の内史の管轄地域は塞国と雍国に分割され、それぞれ司馬欣と章邯が封建されました（紀元前206年）。しかし、劉邦によってこれらの国は征服され、高祖2年（紀元前205年）には塞国が渭南郡と河上郡に、雍国が中地郡となりました。その後、高祖9年（紀元前198年）には、これらの郡は再び内史の管轄下に戻されました。

景帝前2年（紀元前155年）には、内史は左右に分割され、渭南郡と中地郡が右内史、河上郡が左内史の管轄となりました。さらに、武帝の太初元年（紀元前104年）には、右内史の渭南郡だった地域は京兆尹、中地郡だった地域は右扶風と改名されました。左内史は左馮翊と改名されました。これらの京兆尹、右扶風、左馮翊とその周辺地域を合わせて三輔と呼びます。これにより、漢王朝の官としての内史は一旦廃止されました。

諸侯王の内史

一方、前漢において各地に封建された諸侯王の国にも内史が置かれ、諸侯王の都とその周辺を統治しました。漢の内史が改名された後も、諸侯王の内史はそのまま存続しました。しかし、成帝の綏和元年（紀元前8年）に、大司空の何武が諸侯王の国における内史の権力が強大すぎることを危惧し、内史を廃止して諸侯王の相（諸侯相）が民を治めるように進言し、これが受け入れられました。

復活

その後、西晋の武帝の太康10年（289年）に、諸侯相は再び内史と改名され、内史の名称が復活しました。

まとめ

内史は、古代中国において重要な役割を果たした官職であり、その変遷は時代の流れを反映しています。首都近辺の統治から、諸侯王の国の統治まで、その役割は多岐にわたりました。

参考文献

班固著『漢書』巻19上 百官公卿表上、巻19下 百官公卿表下、巻28上 地理志上、巻86 何武伝
中国哲学書電子化計画 『漢書』
* 房玄齢他著『晋書』巻3世祖武帝紀

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