周髀算経

『周髀算経』の概要

『周髀算経』は、中国の古代数学書の一つであり、九章算術と並んで中国における最古の数学書とされています。この書物は、もともと単に「周髀」と呼ばれ、天文学的な内容が主体であったと考えられています。特に、蓋天説や周髀説と呼ばれる天文学的理論を解説するために編纂されたものとして重要視されています。数学的な内容以上に、暦学や天文学の発展に寄与した点が著しいと評価されています。

成立時期と背景

『周髀算経』の具体的な成立時期は不明ですが、『呂氏春秋』からの引用が見られるため、戦国時代末期から前漢の時代にかけて成立した可能性が高いとされています。特に、蓋天説が発展した紀元前2世紀前後に著作されたものと考えられています。書の冒頭には、周公旦と数学者の商高との会話が掲載されており、ここで数学と暦の重要性が強調されています。

内容の特徴

書の中では数学、暦学、天文学に必要とされる知識が述べられており、特に数学的な内容としては円周率の近似値が3.14に示されていたり、ピタゴラスの定理やユークリッド的な幾何学の内容が盛り込まれています。多くは天文に関連する計算方法が取り扱われており、農業や祭りなどの暦に関連する実用的な数理の基盤を提供しています。

影響と注釈

『周髀算経』は古来より暦学の基本書とされながらも、その内容が難解であるため、多くの注釈が加えられました。後漢時代の趙嬰や北周の甄鸞、唐代の李淳風らによって注釈が行われ、その中でも李淳風はこの書の数学書としての価値を高く評価し、「算経十書」の一つに加えました。この結果として、『周髀算経』という名称が広く使用されるようになったのです。

日本への伝来とその後

日本にも、遣唐使を通じて『周髀算経』は伝わり、算道や暦道の教育において重要な教科書とされました。続く北宋の元豊年間にはこの書の刊本が出版され、明の時代以降、多数の叢書に収められ、古代中国の数学と暦学を理解する上での貴重な資料として今でも重んじられています。

このように『周髀算経』は、古代中国の数学と天文学の知識を集約し、歴史的にも非常に重要な位置を占める書物です。現在でもその影響は続いており、歴史的資料として多くの研究が進められています。

参考文献

• - 薮内清「周髀算経」（『アジア歴史事典 4』平凡社、1984年）
• - 李迪著『中国の数学通史』大竹茂雄・陸人瑞訳、森北出版、2002年。
• - 銭宝編『中国数学史』川原秀城訳、みすず書房、1990年。
• - ジョージ・G・ジョーゼフ『非ヨーロッパ起源の数学』垣田高夫、大町比佐栄訳、講談社1996年。

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