和賀江島

和賀江島：鎌倉時代の息吹を感じる、日本最古の築港遺跡

和賀江島（わかえじま/わかえのしま）は、相模湾東部に位置する人工島であり、その歴史的価値から国の史跡に指定されています。別名、和賀江嶋、和賀江の築島とも呼ばれています。

歴史

1232年（貞永元年）に築かれた和賀江島は、現存する築港遺跡としては日本最古のものです。日宋貿易の拠点であった大輪田泊（摂津国）の経が島がそれ以前に存在しましたが、地形変化により失われたため、和賀江島の価値は一層際立っています。

鎌倉幕府の開府後、相模湾の交通量が増加し、前浜の水深の浅さから艀が必要となり、事故も多発していました。そこで、勧進聖の往阿弥陀仏が幕府に港湾施設の築造を願い出ました。執権の北条泰時はこれを後援し、家臣の尾藤景綱、平盛綱、諏訪盛重らが協力しました。相模国西部や伊豆国から海路で運ばれた石材を用いて工事は進められ、同年8月には竣工しました。

往阿弥陀仏は、筑前国葦屋津の新宮浜でも築島を行っていた土木技術の専門家でした。1254年には、南宋などからの唐船の来港が記録されており、国際的な交易の拠点としての役割も担っていました。

鎌倉時代中期以降は、忍性が極楽寺の長老となり、和賀江島の所有・管理権と、関所を通る商船からの関米徴収権が極楽寺に与えられました。1307年には関米を巡る訴訟も起こり、その管理の一端が窺えます。

江戸時代には、和賀江島は「石蔵」や「舟入石蔵」と呼ばれ、材木座村や小坪村（現・逗子市）の漁船の係留場として利用されました。1750年頃には、小坪村が島の西南方に新たな出入口を開き、坂之下村や材木座村との間で争いが起こりましたが、最終的には出入口の幅を制限することで和解しました。

鶴岡八幡宮の修復工事の際には、材木や石を運ぶ船が停泊し、八幡宮とともに島の修復工事も実施されました。1826年には、満潮時に海中に隠れるようになった島の修復を材木座村が願い出ています。

現在の和賀江島

現在、和賀江島は満潮時にはほぼ全域が海面下に隠れてしまいますが、干潮時には岬の突端から西方に200メートルほどにわたって巨石の石積みを見ることができます。かつては北側に数本の石柱があり、南風を避ける船を係留していました。付近の陸地は神奈川県鎌倉市材木座にあたり、すぐ南側には逗子マリーナがあります。鎌倉市と逗子市の境界に位置しています。

史跡としての沿革

• - 1968年（昭和43年）10月14日：「和歌江嶋」として国の史跡に指定。
• - 2006年（平成18年）1月26日：地域追加指定。

和賀江島は、日本の歴史と土木技術の粋を集めた貴重な遺産であり、その姿は時代を超えて私たちに語りかけてきます。訪れる際には、干潮時を狙って、その石積みを間近に感じてみてください。

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