善恵寺

善恵寺（ぜんねじ）

善恵寺は、岐阜県加茂郡八百津町にある西山浄土宗の寺院です。宗祖である西山国師証空（しょうくう）によって開創され、その房号「善恵」にちなんで名付けられました。西山国師遺跡霊場の第五番札所となっています。

歴史

1223年（貞応2年）、法然の弟子である証空（善恵）が関東巡錫の途中にこの地を訪れ、善恵寺を開山しました。その後、1452年（享徳元年）には、美濃守護の土岐成頼（ときしげより）と守護代の斎藤妙椿（さいとうみょうちん）によって七堂伽藍と八つの塔頭が建立され、寺は再興しました。特に斎藤妙椿は、支院として持是院を構え、自らも持是院妙椿と名乗るほど善恵寺を深く保護しました。

1472年（文明4年）には、土御門天皇より勅願寺住持代々着香衣の綸旨を賜り、寺の格式はさらに高まりました。斎藤妙椿は、寺領として東西南北の境界を定め、尾張の曼陀羅寺の泉栄（せんえい）と協力して、両寺の僧侶に法門の紹隆を図るよう指示しました。

室町時代には、斎藤妙椿や土岐家とのつながりから後花園天皇の勅願寺となり、西山嫡流の寺として繁栄しました。しかし、1558年から1570年（永禄年間）にかけての火災により、寺の建物は全て焼失してしまいます。その後、本坊をはじめ塔頭八坊が再建されました。

1590年（天正18年）には、和知城主となった稲葉方通（いなばみちてる）が当地の領主となります。1634年（寛永11年）には、黒瀬裏にあった大仙寺を、善恵寺が所有していた土地に移しました。ところが、1665年（寛文5年）、稲葉良通（いなばよしはる）は、善恵寺が所有していた田畑山林などの過半を取り上げ、善恵寺の鎮守である神明社とその社僧の社領を村の百姓に分け与え、残りを大仙寺に寄付してしまいました。これにより、十七世の住職である呑貞（どんてい）が亡くなった後は、一時的に住持が不在の状態となってしまいました。

十八世の貞山（ていざん）は、稲葉氏に寺領の返還を交渉したり、尾張藩や幕府の寺社奉行に訴えを起こしたりしましたが、解決には至りませんでした。1684年から1688年（貞享年間）にかけて、十九世の泰忍（たいにん）の時代には、塔頭の修理もままならず、辛うじて寿正院のみを維持して寺格を保っていました。

1689年（元禄8年）には、尾張藩主の徳川綱誠（とくがわつななり）から、寺領として21石1斗5升が寄進されました。現在の伽藍は明治時代に再建されたものです。参道には、正徳・享保の頃に檀家から寄進された470個の石臼が敷き詰められており、その様子から「石臼寺」とも呼ばれています。

文化財

善恵寺には、岐阜県指定の文化財である「阿弥陀来迎図」が所蔵されています。また、八百津町指定の文化財として、一条兼良（いちじょうかねら）の書跡や斎藤妙椿の書状などが所蔵されています。

参考文献

『八百津町　通史編』　第九章 近世の宗教と文化　第二節 宗教・寺院　善恵寺　p209～p210　八百津町史編纂委員会　1976年
『美濃国加茂郡誌』　第七章　宗教　第二節　寺院　【八百津善恵寺】　p785～p787　岐阜県加茂郡役所　大正10年
* 岐阜県高等学校教育研究会地歴・公民部会,地理部会『岐阜県の歴史散歩』山川出版社。

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