喜入氏

喜入氏の概要

喜入氏（きいれし）は、日本の伝統的な氏族の一つであり、島津氏の支流にあたります。その起源は、薩摩国守護の島津氏の9代当主・忠国の七男である島津忠弘にさかのぼります。忠弘は、父から薩摩国の喜入（現在の鹿児島市喜入地域）を授かり、この地を拝領したことが、喜入氏の成立の始まりです。

ただし、初代の忠弘が「喜入」という姓を最初に名乗っていたわけではありません。この姓を公式に名乗るようになったのは、喜入氏の5代目当主である島津忠賢が、後に喜入季久と呼ばれるようになる代からです。このとき、宗家の15代目当主・島津貴久の命により喜入の名を称すること権利が与えられました。

歴史的背景

島津忠弘の弟である頼久は、島津忠国の8男で、指宿（現在の指宿市）を与えられていました。しかし、頼久には後継ぎがいなかったため、彼は忠弘に指宿の地を譲渡しようとしました。忠弘は自身の男子（後の忠誉）が幼少であったため、頼久を養子として迎え入れ、彼の実子を頼久の養子にしました。これにより、喜入と指宿の両地域を併有することとなりました。

5代目当主である季久は、喜入、指宿、さらに薩摩鹿籠（現在の枕崎市）をも併有しましたが、6代目の久道の時には永吉（現・鹿児島市永吉）に転封されました。そして文禄4年（1595年）には喜入の地を肝付氏が支配することになります。

7代目の忠続の時代には、再び薩摩鹿籠に転封され、江戸時代にはその地域だけの領有となりますが、藩主であった島津光久の子が養子になり、家格が一所持と見なされるようになりました。

偏諱と姓の使用

喜入氏の偏諱は、正徳年間以降、嫡流には「久」の字が使用されることが許可されていました。一方、庶流以下の者たちは、3代目当主・忠誉から取った「誉」の字が使用されることとなりました。また、喜入姓は直別の支流を意味し、士分以下や他家の奉公人が名乗ることは許可されず、名乗っていた者たちは改姓を命じられるという厳格な規定も存在しました。

歴代当主

喜入氏には多くの歴代当主が存在します。以下に主要な当主を列挙します。

• - 島津忠弘（島津忠国の七男）
• - 島津頼久（養子、島津忠国の八男）
• - 島津忠誉（養子、初代・忠弘の嫡男）
• - 島津忠俊（忠誉の嫡男、子には季久、忠道、久続がいる）
• - 喜入季久（忠俊の嫡男。この時期から喜入姓を名乗る）
• - 喜入久道（季久の嫡男、一男一女がありましたが共に早世）
• - 喜入忠続（養子、季久の四男。忠政とも呼ばれる、兄の跡を継ぐ）
• - 喜入忠高（忠続の次男。兄が永吉島津家を継いだため当主となる）
• - 喜入忠長（養子、薩摩藩2代藩主・島津光久の三男、後に北郷氏を継ぐ）
• - 喜入久亮（養子、島津光久の九男、兄が北郷氏を継いだため当主に）
• - 喜入久致（久亮の嫡子、24歳没）
• - 喜入久峯（久亮の三男、初名は誉貞、19歳没）
• - 以降、喜入氏は数代にわたり続いてきました。

現在の喜入氏

現在、喜入氏の当主は喜入忠久であり、その家系は長い歴史を有しています。喜入氏は日本の歴史や文化において重要な役割を果たしてきた氏族の一つであり、その影響は今日においても続いています。

参考文献

• - 『本藩人物誌』 鹿児島県史料集(13)（鹿児島県史料刊行委員会）
• - 稲葉行雄 『「さつま」歴史人名集』（高城書房出版）ISBN 4-924752-28-2
• - 『鹿児島県史料 旧記雑録拾遺 諸氏系譜 3』（鹿児島県 1991年）

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