国鉄ク300形貨車

国鉄ク300形貨車：日産[[自動車]]の自動車輸送を支えた異端の貨車

国鉄ク300形貨車は、1965年と1966年に東急車輛製造と日本車輌製造でそれぞれ1両ずつ製造された、日産[[自動車]]所有の私有貨車です。当初は大物車として計画されましたが、称号規程の改正により車運車として落成しました。車籍は日本国有鉄道（国鉄）に編入されています。

開発の背景

本形式は、トヨタ[[自動車]]販売用のシム1000形、ダイハツ工業用のシム2000形、三菱重工業（三菱[[自動車工業]]）用のシム3000形に続き、日産[[自動車]]が鉄道による自動車輸送（新車）のために開発しました。当初はブルーバード、後にサニーを輸送しました。

設計

ク300形は2両のみですが、製造メーカーが異なるため、構造に大きな違いがあります。どちらもボギー車で、上下2段に自動車を積載できます。下段は横2列、縦4列の8台、上段は縦1列4台の計12台を積載可能です。

ク300

東急車輛製造製のク300は、全長18,330mm、全幅2,991mm、全高3,717mmで、自重19.9t、荷重は当初12t、後に8tとなりました。台枠は魚腹形で、台車はTR41C-1形を使用しています。自動空気ブレーキに加え、両端に手ブレーキ操作ハンドルが設置されています。

自動車は、貨車に取り付けられたテーブルを引き出し、固定して搭載します。下段、上段ともに中央付近で分割されたテーブルで、両車端側を軸として回転させ、ホーム側へ引き出します。上段テーブルは、車体中央付近の柱で支えられており、内部の昇降装置で下段まで傾けて降ろすことができます。昇降装置は電動チェーン式で、交流100V電源を使用します。また、複数車両連結時に上段を自動車が自走できるよう、渡り板が両端の妻面左側に折りたたみ式で装備されています。

ク301

日本車輌製造製のク301は、全長18,920mm、全幅2,957mm、全高3,850mmで、自重19.5t、荷重と運賃計算トン数はク300と同じです。台枠は平台枠で、台車はコイルばねとオイルダンパを備えたTR41D-1形を使用します。自動空気ブレーキに加え、側ブレーキを装備しています。

自動車の積載方式はク300と同様ですが、テーブルの動かし方が異なります。下段は、ク300では両端が軸でしたが、ク301では同じ側を軸として回転します。上段は、ク300では2分割でしたが、ク301では1枚のテーブルで、ガーダー構造となっています。下段テーブルの回転軸が無い側の車端に昇降装置があり、上段テーブルを傾けて降ろします。昇降装置はク300と同様です。上段同士の渡り板は、昇降装置のある側に左右両方装備されており、連結する車両の向きを揃えることで通路が形成されます。そのため、ク300とク301を連結しても、渡り板が干渉するかどちらか一方しかないため、自動車が渡ることはできません。

このように、ク300形は同じ形式でありながら、魚腹形台枠と平台枠、中央の支柱の有無、上段の構造など、外観は大きく異なります。

運用

新興駅常備として運用されましたが、実際には日産追浜工場で生産された自動車を横須賀駅を拠点に輸送していました。1965年12月から宮城野駅（現在の仙台貨物ターミナル駅）を始め、北陸・東北方面への試験輸送も行われました。1967年2月にはサニー対応のため緊締装置やタイヤガイドなどが改造され、荷重が8tに変更されました。しかし、ク5000形による輸送が普及したため不要となり、1972年3月に廃車されました。

まとめ

国鉄ク300形貨車は、日産[[自動車]]の自動車輸送のために開発された特殊な貨車です。2両のみ製造され、それぞれ構造が異なっていました。短期間で廃車となりましたが、その特異な構造は、当時の鉄道輸送における自動車輸送の試行錯誤を物語るものと言えるでしょう。

参考文献

渡辺 一策『RM LIBRARY 83 車を運ぶ貨車（上）』（初版）ネコパブリッシング、2006年。ISBN 4-7770-5172-2。
渡辺 一策『RM LIBRARY 84 車を運ぶ貨車（下）』（初版）ネコパブリッシング、2006年。ISBN 4-7770-5173-0。

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