園基氏

園基氏（そのもとうじ）：鎌倉時代の公卿、知られざる生涯

園基氏は、鎌倉時代前期に活躍した公卿であり、園家の祖として知られています。権中納言・持明院基家の三男として生まれ、その生涯は政治と文化が交錯する時代を映し出しています。若くして官位を授かり、異例の昇進を遂げましたが、その後出家し、隠遁生活を送りました。しかし、その才能は埋もれることなく、包丁芸の達人として名を残し、『徒然草』にも「園の別当入道」として登場します。

若き日の栄光と出家

建暦元年（1211年）に生まれた基氏は、幼名を家教と名付けられました。建保2年（1214年）に叙爵して以降、順調に昇進を重ね、承久3年（1221年）には従五位上、左兵衛佐に任じられます。貞応2年（1223年）には右近衛少将、元仁元年（1224年）には正五位下へと昇進。嘉禄元年（1225年）には従四位下・右近衛中将、安貞2年（1228年）には従四位上・能登介と、そのキャリアは華々しいものでした。寛喜元年（1229年）には正四位下に昇叙、寛喜2年（1230年）には蔵人頭を務めるなど、朝廷内での存在感を高めていきました。

寛喜3年（1231年）には参議に任ぜられ、同年10月には従三位に昇ります。寛喜4年（1232年）には讃岐権守、貞永元年（1232年）には右兵衛督を兼ね、検非違使別当にも任じられました。貞永2年（1233年）には正三位に昇りますが、文暦元年（1234年）に後堀川院法華堂にて出家し、法名を圓空としました。弘安5年（1282年）11月に72歳で薨去。

『徒然草』に語られる包丁芸

基氏が人々に語り継がれる理由の一つに、卓越した包丁芸があります。『徒然草』第231段には、「園の別当入道」として、その名が登場します。ある時、人々が基氏の包丁芸を見たいと願った際、彼は周囲の期待を感じ、遠慮がちに勿体ぶった態度をとりました。しかし、その様子を見た西園寺実兼は、「なぜそんなにもったいぶる必要があるのか」と疑問を呈しました。このエピソードは、何事も率直であるべきという教訓として語り継がれています。

後堀河院の外戚として、持明院一門は急速に官位を昇進させましたが、後堀河院の崩御後、外戚としての勢いは衰え、それが基氏の「遠慮」の気持ちに繋がった可能性があります。西園寺実兼の発言は、新たな外戚家の立場からの発言と解釈することもできます。

西園寺家との深い縁戚関係

基氏の娘は西園寺公相に嫁ぎ、橋本実俊を生んでいます。つまり、西園寺実兼にとっては異母弟にあたります。『徒然草』第231段のエピソードがいつの時点のことかは定かではありませんが、西園寺実兼と基氏の間には遠縁ながらも親戚関係が存在していたのです。この背景を知ることで、『徒然草』の記述から、より複雑な人間関係が見えてきます。さらに、基氏の孫である基藤は、橋本実俊の娘を娶っており、両家の結びつきはより一層強固なものとなりました。

園基氏の官歴

建保2年（1214年）正月5日：叙爵
承久3年（1221年）11月29日：従五位上
承久3年（1221年）12月12日：左兵衛佐
貞応2年（1223年）正月27日：右近衛少将
貞応3年（1224年）正月5日：正五位下
嘉禄元年（1225年）12月24日：従四位下・右近衛中将
安貞2年（1228年）正月5日：従四位上
安貞2年（1228年）2月1日：能登介
安貞3年（1229年）正月30日：正四位下
寛喜2年（1230年）3月26日：蔵人頭
寛喜3年（1231年）3月25日：参議
寛喜3年（1231年）10月12日：従三位
寛喜4年（1232年）正月30日：讃岐権守
貞永元年（1232年）6月29日：右兵衛督、検非違使別当
貞永2年（1233年）正月6日：正三位
文暦元年（1234年）11月16日：出家

系譜

父：持明院基家
母：阿古 - 白拍子
妻：藤原隆忠の娘
男子：園基顕（1238-1319）
女子：西園寺公相室
妻：家女房
男子：園基有（1236-1273）
次男：園基重
生母不明の子女
男子：言性
女子：一条実経室
女子：花山院通雅室

園基氏は、公卿としての華やかなキャリア、包丁芸の達人としての逸話、そして西園寺家との深い縁戚関係を通じて、鎌倉時代の貴族社会の一側面を鮮やかに描き出しています。彼の生涯は、単なる歴史上の人物としてだけでなく、文化人としての魅力に満ち溢れています。

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