圓

東アジアの通貨単位「圓」の歴史

「圓（えん、げん、ウォン、ドル、パタカ、トゥグルク）」は、東アジアの各国で用いられる通貨単位です。この文字は元々「まる」を意味し、日本の「円」の旧字体に当たります。現在、通貨単位としては「円」「圆」「元」「원」が使われていますが、貨幣面に「圓」を残しているのは、繁体字を標準とする台湾、香港、マカオです。

「圓」の文字の変遷

中国では「圓」が「圆（Yuan）」と簡略化され、韓国のウォン（원）は過去に「圓」と書かれましたが、一時「圜」（ファン、환）を経て、現在は公式に「圓」を廃棄しハングル表記です。台湾、香港、マカオでは現在も「圓」が使われています。

メキシコドルの流入と「銀圓」

中国では古くから銅銭が使われていましたが、経済拡大により銀が通貨として使われるようになり、特に18世紀には、メキシコから大量の銀貨（メキシコドル）が流入し「銀圓」と呼ばれました。メキシコドルは「墨銀」や「番銀/蕃銀」、「鷹洋」とも呼ばれました。日本にも同様にメキシコドルが流入し、貨幣問題が生じました。

スペインドルは1535年に鋳造が始まり、メキシコドルは1823年から発行されました。特にメキシコドルは総鋳造量が約35億5000ドルに達し、世界の流通市場を圧倒しました。これらの銀貨は量目27.07グラム、品位90.3%でした。

「圓」とドルの関係

ドルの起源はターラーとされますが、アメリカの1ドル銀貨はメキシコドルが元になっており、量目や銀品位もほぼ同じでした。東アジアではドルを漢字の「圓」で表記したため、「圓」とドルは起源を同じくします。19世紀後半には「圓」とドルが国際通貨として流通しました。

メキシコドルに対し、アメリカや日本の銀貨は歴史が浅く、市場での信用を得るのに苦労しました。アメリカと日本は貿易銀を発行して対抗しましたが、成功しませんでした。

銀本位制から金本位制へ

19世紀までは銀本位制が主流でしたが、イギリスやアメリカ、ドイツ、フランスなどの欧米各国が金本位制へ移行しました。日本も名目上は1871年から金本位制でしたが、実際には銀本位制でした。銀の増産や各国の銀本位制離脱により、銀の価値が下落し、「圓」の価値も米ドルに対して下落しました。

中国や台湾では、米ドルを「美圓」、ユーロを「欧圓」と表記します。

各地域における「圓」

香港

香港は1842年にイギリスに割譲され、1866年から一圓銀貨を製造しましたが、メキシコドルに取って代わられ製造を停止しました。1895年からは貿易銀を発行しました。
香港ドルは「港元」と表記されますが、「港圓」も過去の表記として現在も使われています。

日本

江戸時代の貨幣制度は金、銀、銭の三貨併行でしたが、開国により国際化を迫られました。明治2年（1869年）には新貨幣の単位として「圓」が採用されました。

「圓」は「Yen」と表記されますが、なぜ「En」ではなかったかには諸説あります。

明治4年（1871年）には新貨条例が制定され、一圓金が原貨と定められました。当初は銀貨も発行されましたが、その後金本位制に移行しました。明治30年（1897年）には金平価が半減しました。第二次世界大戦後には新円切替が実施され、「圓」は新字体の「円」に変わり、硬貨や紙幣にも「円」が使われるようになりました。

韓国

朝鮮半島では1883年に近代的な幣制を施行し、一圜(Warn、Whan)を発行しました。1897年には1圜（원、Won） = 100銭(Chon)と改訂されました。1905年からは大阪造幣局で韓国の貨幣製造が行われました。

日韓併合後、日本の貨幣制度が導入され、第二次世界大戦後、韓国ではウォンが発行されました。北朝鮮でもウォンが発行されています。

中国

清国ではメキシコドルが流通していましたが、1890年には光緒元寶が発行されました。中華民国成立後、1914年には袁世凱の肖像入りの銀幣が発行され、1933年には銀元が導入されました。1935年には銀本位制が廃止され、管理通貨制度となりました。国共内戦後、人民元が発行されました。

台湾

台湾でもメキシコドルが流通していましたが、1870年代以降は日本の一圓銀貨が流入しました。しかし、日本が金本位制に移行したため、一圓銀貨は廃止され、その後、台湾銀行券引換元圓銀が発行されました。中華民国政府の移転後、新台湾ドルが発行され、通貨単位として「圓」が使用されています。

マカオ

マカオではメキシコドルが流通していましたが、1905年にマカオ・パタカが発行されました。パタカは「圓」のポルトガル語読みです。マカオ・パタカは香港ドルと固定相場制です。

海峡植民地

1903年からイギリスは海峡植民地との交易専用に貿易銀を発行しました。1904年にはイギリス貿易銀やメキシコドルの通用が停止されました。

モンゴル語の「トゥグルク」

モンゴルでは「圓」と同義の「トゥグルク」が貨幣単位として使われました。1925年に紙幣と銀貨が発行され、金本位制を導入しました。

満洲

満洲国では「圓」が通貨単位として採用されました。当初は銀本位制でしたが、後に金本位制に基づく日本の通貨と固定相場制となりました。

まとめ

「圓」は、東アジアの歴史と深く結びついた通貨単位であり、その変遷は各国の経済や政治状況を反映しています。銀圓の起源から金本位制への移行、各国の近代貨幣制度設立に至るまで、「圓」は多様な姿を見せてきました。



参考文献

各国の中央銀行や歴史博物館の公式サイト
通貨史に関する専門書
ウィキペディア

関連項目

円
ドル
圓に該当する諸通貨
円 ([[通貨)]]
銀元
人民元
満洲国圓
ウォン
大韓民国ウォン
朝鮮民主主義人民共和国ウォン
ニュー台湾ドル
香港ドル
マカオ・パタカ
トゥグルグ

外部リンク

圓 - 中国の歴史的および現在の紙幣（CNY / RMB）1953〜2019 （英語）（ドイツ語）（フランス語）
* 圓 - 年の中華人民共和国の外国為替証明書（FEC）1980〜1994 （英語）（ドイツ語）（フランス語）

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