土御門泰邦

土御門 泰邦 (つちみかど やすくに)

土御門泰邦は、江戸時代中期に活躍した政治家および陰陽家であり、従二位を持つ公卿です。彼は、土御門泰福の末子であり、兄の養子として家督を継ぐことになりました。官位は正二位・治部卿にまで昇進しました。

経歴

土御門家の家系は、泰邦が幼少期の頃、父・泰福の嫡男であった泰誠が早逝したことから大きく変わります。弟の泰連が家督を継ぐことになりましたが、子供が恵まれなかったため、末弟の泰邦が養子として迎えられることになりました。泰連はその後、実子泰兄を授かりましたが、泰邦が泰兄を養子として迎えることを条件に家督を引き継いだのです。

寛延3年（1750年）、泰邦は兄の引退を受けて従三位へと昇進します。江戸幕府の成立以降、幕府は朝廷から改元権限を奪い、さらに貞享暦制定時には土御門泰福の配下であった渋川春海を天文方へ引き入れて改暦権限まで支配しました。この状況を憂慮した泰邦は、西村遠里などの在野の暦学者たちを保護し、自らの配下に取り込むことで対抗を試みました。

8代将軍・徳川吉宗が新暦作成のために西川正休を派遣した際、吉宗は急逝します。この混乱を利用して、泰邦は西川らを京都から追放し、自身が改暦を主導することになります。宝暦4年（1754年）に「宝暦暦」を作成し、翌年に実施しました。これにより、泰邦は正二位・治部卿まで昇進しましたが、宝暦暦施行から日食予測の不備が指摘されるなど、多くの問題が発生します。泰邦の生存中の明和8年（1771年）には早くも修正が加えられ、泰邦の死後わずか13年後には寛政暦への改暦が行われました。

また、寛保2年（1742年）、泰邦は漏刻の復刻に関する勅命を受けて『漏刻緯』を著しました。この書は宝暦暦に関する基本書『宝暦暦法新書』にも摘録が掲載されています。漏刻の概要や図面から実際に復元作業が行われたものの、完成度には限界があり、泰邦はそれに不満を持っていたことが記されています。さらに、復元作業に関与した渋川泰栄の子孫も、その記録と比較し、寸法が明記されていないために再現が難しかったと批判しています。

泰邦の墓は京都市下京区にある土御門家の菩提寺・梅林寺にあります。そこには彼を含む土御門家の一族20基を超える墓があり、子孫と連絡が途絶えたため、梅林寺が供養を行っています。

人物

宝暦10年（1760年）、泰邦は宣旨を将軍家に伝える勅使と共に江戸へ向かう途中、「東行話説」という記録を残しています。道中では各地の名産や食べ物について細かく感想を述べており、これは当時の東海道中の名物を知る貴重な記録となっています。

系譜

• - 父：土御門泰福（1655-1717）
• - 母：不詳
• - 養父：土御門泰連
• - 妻：不詳
• - 子：高辻福長の正室
• - 養子：土御門泰兄（泰連の子）

関連項目

• - 随筆百花苑 - 巻13地誌篇
• - ハレー彗星（1759年3月13日）

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