垣鼻町

垣鼻町（かいばなちょう）

三重県松阪市に位置する垣鼻町は、その歴史と地理的特徴から、多様な側面を持つ地域です。松阪市の北東部、中心市街地の南東に位置し、金剛川中流部の平地に広がっています。

地理

町内は住宅地、商業地、工業地が混在し、特に南部では宅地開発が進行しています。しかし、水田も残っており、自然と都市が調和した景観を呈しています。JR紀勢本線と近鉄山田線が町の北側を並走し、中央には伊勢参宮街道が通っています。

河川

名古須川
金剛川

隣接する町

北は清生町・宮町、北東は幸生町、東は大津町・田原町、南は下村町・久保町、南西は駅部田町、西は春日町三丁目・春日町一丁目・愛宕町一丁目、北西は挽木町と接しています。

歴史

近世まで

垣鼻町の歴史は古く、海会寺裏の小久保遺跡からは、4世紀から5世紀にかけての土器が発見されており、古代から人々が生活していたことが伺えます。また、垣鼻という地名は、松阪中心部への入り口を意味するとされ、歴史的に重要な場所であったと考えられます。

垣鼻の名は、1293年の文献に初めて登場し、その後、1568年の人夫状にも「かいはな 次郎太郎」という名前が見られます。近世には、紀州藩松坂城代の支配下にあり、城下町を構成する垣鼻町と、近隣の農村である垣鼻村の二つに分かれていました。新田開発により村高が増加し、筵の生産や伊勢参宮街道沿いの宿場町として栄えました。また、ホタルの生息地としても知られ、風流な文化も花開いていました。

近代

明治時代に入ると、垣鼻町は愛宕町に吸収されましたが、垣鼻村には人民共立学校が設立され、後に垣鼻学校（現在の松阪市立第五小学校）が開校しました。1876年には伊勢暴動が発生し、農民軍が垣鼻村に集結しましたが、最終的に鎮圧されました。1883年の『垣鼻村地誌』によると、当時の主な産物は菜種、実綿、荷棒、清酒であり、多様な産業が展開されていました。1889年に町村制が施行されると、垣鼻村は松阪町と神戸村に分割されました。

大正時代以降は、住宅が増加し、伊勢繭糸商会や関西製糸松阪工場などの大規模な工場が進出しました。

現代

第二次世界大戦後、伊勢暴動の舞台となった海会寺野で「南部振興事業」が行われ、開拓が進みました。1947年には松阪労働基準監督署や松阪市立東中学校が設立されましたが、その後、労働基準監督署は移転、東中学校は久保中学校に統合されました。松阪大火後には第二小学校が垣鼻の工場を仮校舎として利用、また、三重県松阪南高等学校（現在の三重県立松阪高等学校）も設置されるなど、文教地区としての側面も持つようになりました。1953年には、一部が分離して茶与町などの新町が誕生し、残部が松阪市垣鼻町となりました。その後も一部が分離し、現在の形になっています。

永らく操業していた興和紡績松阪工場は、1996年に操業を休止し、その跡地は宅地やパチンコ店になりました。

沿革

1889年（明治22年）4月1日：町村制施行により、飯高郡神戸村大字垣鼻となる。
1896年（明治29年）4月1日：飯高郡が飯野郡と合併し、飯南郡神戸村大字垣鼻となる。
1931年（昭和6年）4月1日：神戸村が松阪町に編入され、飯南郡松阪町大字垣鼻となる。
1933年（昭和8年）2月1日：松阪町が市制施行し、松阪市大字垣鼻となる。
1953年（昭和28年）5月1日：大字垣鼻から愛宕町・茶与町・長月町・南町・春日町が分離し、残部が松阪市垣鼻町となる。
1954年（昭和29年）3月5日：一部が分離し、愛宕町（一 - 四丁目）・長月町・平生町・五十鈴町となる。
1959年（昭和34年）4月1日：春日町の一部を垣鼻町に編入。
1959年（昭和34年）7月21日：一部が分離し春日町三丁目となり、春日町の一部を垣鼻町に編入。

町名の由来

町名の由来には諸説あり、『勢陽五鈴遺響』には、松坂城下町の垣根の先にあることから命名されたとされ、『松阪雑集補遺』では、神宮寺の垣根の先にあるからと説明されています。旧表記には、垣花、加井花、か井はな、かいはななどがあります。

人口と世帯

2019年（令和元年）9月1日現在の世帯数と人口は以下の通りです。

人口の変遷

1869年以降の人口推移がありますが、垣鼻町の範囲が変遷しているため、単純な比較は難しいです。

世帯数の変遷

1869年以降の世帯数推移があり、人口同様に、町の範囲の変遷に注意が必要です。

小・中学校の学区

垣鼻町は、第二小学校、第五小学校、久保中学校の学区に含まれます。特に、第五小学校は、かつて「垣鼻学校」と称していました。

経済

2015年の国勢調査によると、就業者は製造業、卸売業・小売業、医療・福祉に従事する人が多く、サービス業、建設業が続きます。

2014年の経済センサスでは、全事業所数は146、従業員数は1,164人で、卸売業・小売業、不動産賃貸業・管理業、建設業、医療・福祉などの事業所が多いです。小規模事業所が多いですが、30人以上の事業所も存在します。

2015年の農林業センサスでは、農林業経営体数は6、農家数は11戸であり、耕地面積は田が12 ha、畑が1 haとなっています。

棒屋

近世から近代にかけて、天秤棒を製造販売する「棒屋」が垣鼻の特徴的な商業として存在しました。その販売範囲は広範囲に及び、かつては10軒ほどの棒屋が存在したとされています。

交通

鉄道

JR紀勢本線と近鉄山田線が通っていますが、町内に駅はありません。最寄り駅は近鉄山田線東松阪駅です。

路線バス

三重交通と鈴の音バスが乗り入れており、いくつかのバス停があります。

道路

三重県道37号鳥羽松阪線
三重県道60号伊勢松阪線
三重県道756号松阪環状線
伊勢参宮街道

施設

垣鼻町内には、公共施設や商業施設、教育施設などが点在しています。

出身・ゆかりのある人物

田村元（自民党衆議院議員、労働大臣、運輸大臣、通産大臣、衆議院議長）
田村憲司（日本土建名誉会長、自民党衆議院議員田村憲久の父）
田村秢（弁護士、衆議院議員、三重県会議員、同議長）

その他

郵便番号：515-0033（集配局：松阪郵便局）

垣鼻町は、その歴史と地理的な背景から、多様な文化と産業が育まれてきた地域です。古代から現代までの変遷を通じて、その独自性を保ち続けています。

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