外山脩造

外山 脩造

外山 脩造（とやま しゅうぞう）は、天保13年11月10日（1842年12月11日）に越後国長岡藩領（現在の新潟県長岡市栃尾地区）に生まれた人物です。幕末には長岡藩士として過ごし、明治維新後は官吏、実業家、そして政治家として日本の近代化に貢献しました。幼名を寅太といい、藩士の家に生まれて後に外山家を継いでいます。号は軽雲。

幼少期を故郷で過ごした外山は、井上五蔵に漢学を学び、後に長岡藩の山田愛之助のもとで儒学を修めました。17歳で江戸へ遊学し、清河八郎から剣術や漢学の手ほどきを受け、また塩谷宕陰のもとでも学びを深め、幕府の学問所である昌平坂学問所にも入学するなど、若くして幅広い分野の知識を吸収しました。

彼の人生に大きな影響を与えたのが、戊辰戦争でした。北越戦争では、長岡藩の軍事総督であった河井継之助に付き従い、負傷した継之助に寄り添いながらその最期を見届けました。会津へ逃れる道中、病状が悪化した継之助は、会津塩沢に留まる外山に対し、「これからは実力主義の世になる。戦争が終わったら商人になるが良い」と助言したと伝えられています。また、この時、外山は継之助から福澤諭吉に宛てた添え書きを託されました。

明治維新後の新たな時代に入り、明治2年（1869年）、28歳となった外山は、河井継之助から託された添え書きを携えて、小林雄七郎らと共に慶應義塾に入塾しました。慶應義塾で近代的な学問を学び、在学中には開成学校でも学び、明治5年（1872年）に慶應義塾を卒業しています。

卒業後は大蔵省に入省。紙幣寮を経て銀行課に配属され、日本の国立銀行制度の創設に携わりました。一時、秋田県での勤務も経験していますが、程なく大蔵省に戻っています。

明治11年（1878年）、外山は渋沢栄一の斡旋により大阪へ赴き、大阪第三十二国立銀行（後の浪速銀行）の総監役を任されました。彼は銀行の本店を移転させ、他の銀行を合併するなど経営の近代化と整理を進め、わずか数年で銀行の業績を飛躍的に向上させました。その後、横浜正金銀行大阪支店での勤務を経て、明治15年（1882年）には新設された日本銀行大阪支店の初代支店長に任命されました。約3年間、この要職を務め、大阪の金融界における指導者としての地位を確立しましたが、当時の日銀総裁であった富田鉄之助と意見の対立があり、辞職を選びました。

日本銀行を辞任した後、外山は実業界に本格的に乗り出します。明治20年（1887年）から翌年にかけて欧米を視察し、商工業の状況を詳しく調査しました。この視察でビール醸造事業や信用調査機関の重要性を痛感した外山は、帰国後、明治24年（1891年）に大阪に日本で初めての商業興信所を設立し、自ら総長を務めました。これは日本の信用調査事業の先駆けとなります。

また、アサヒビールの前身である大阪麦酒会社の設立に深く関与したほか、阪神電気鉄道の初代社長（明治32年/1909年）に就任するなど、関西における電気鉄道事業の発展に大きな役割を果たしました。ニューヨークで電気鉄道の模型を見て私鉄経営を構想したというエピソードも残されています。これに先立ち、大阪貯蓄銀行副頭取、浪速銀行頭取、大阪舎密工業社長などを歴任し、大阪米穀取引所理事、大阪商業会議所副会頭、大阪府会議員、大阪銀行集会所委員長といった関西経済界の要職を歴任し、その発展に多大なる貢献を果たしました。電気事業、ガス事業、保険事業など、幅広い分野の事業を手掛け、六甲山の開発にも積極的に取り組みました。

政治家としては、明治25年（1892年）の第2回衆議院議員総選挙に無所属で立候補し、当選を果たしています。後に近畿倶楽部に所属しました。

大正5年（1916年）1月13日、外山脩造はその生涯を閉じました。墓は大阪市設南霊園にあり、傍らには漢学者・三島毅による顕彰碑が建立されています。

外山の死後、昭和10年（1935年）に創設されたプロ野球チーム「大阪タイガース」（現在の阪神タイガース）の名称が、外山の幼名「寅太」に由来するという説があり、「阪神タイガース生みの親」として語られるようになりました。かつて阪神甲子園球場の前には外山の銅像が建立されていましたが、第二次世界大戦中の金属供出により撤去されています。（現在、同地にはアサヒビールが虎を模した銅像を新たに設置しています。）

また、アサヒビールと外山の故郷である新潟県長岡市（栃尾地域）は、2011年に「外山脩造賞」を創設しました。これは、アサヒビールの前身設立に携わった外山が栃尾地域の出身であることにちなみ、同地域の産業発展に貢献した企業や人物を表彰するものです。

親族には、長男・秋作の子に美術評論家の外山卯三郎やナショナルトラスト運動の先駆者・外山八郎が、三男・捨造の子に作曲家の外山道子がいるなど、多方面で活躍した人物を輩出しています。三男・捨造自身も家督を継ぎ、多くの企業重役を務め、羽衣高等女学校の創立支援にも尽力しました。

外山脩造は、幕末の混乱から近代日本の黎明期にかけて、河井継之助の薫陶を受け、官界、金融界、そして実業界で類稀なる手腕を発揮しました。特に、鉄道、金融、商業、製造業といった幅広い分野で新たな事業を興し、関西経済の基礎を築いた功績は特筆されます。その進取の精神と多角的な活動は、現代にも多くの示唆を与えています。

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