多治比長野

多治比長野（たじひ の ながの）は、奈良時代に朝廷で重きをなした公卿です。名は永野とも記されます。彼は、大納言を務めた多治比池守を祖父に持ち、鋳銭長官であった多治比家主の子として生まれました。最終的な官位は従三位・参議にまで昇り、その生涯を государственными affairsに捧げました。

経歴

長野は天平神護元年（765年）に従五位下に叙爵されたことから、その官僚としてのキャリアをスタートさせました。称徳天皇の治世下では、刑部大判事、造東内次官、大和介といった要職を歴任し、着実にその地位を固めていきました。神護景雲3年（769年）には従五位上に昇叙されています。

光仁天皇の時代に入ると、宝亀2年（771年）に正五位下、宝亀7年（776年）には正五位上、宝亀9年（778年）には従四位下へと順調に昇進を重ねました。宝亀8年（777年）には民部大輔を務めたものの、その後は三河守、出雲守、摂津大夫といった地方官を主に歴任しました。これらの地方官としての経験は、彼に中央とは異なる視点をもたらしたことでしょう。

桓武天皇の時代にも、長野の昇進は止まりませんでした。延暦3年（784年）に従四位上、延暦4年（785年）には正四位上へと昇進を続けました。この間、伊勢守や近江守といった地方官に加え、刑部卿も務めています。延暦6年（787年）には従三位に叙せられ、ついに公卿の仲間入りを果たしました。延暦8年（789年）正月には参議に任ぜられますが、その年の12月22日に84歳で薨去しました。最終官位は参議兵部卿従三位でした。

官歴

以下は、『続日本紀』に記された多治比長野の官歴です。

時期不詳：正六位上
天平神護元年（765年） 正月7日：従五位下
天平神護3年（767年） 8月11日：刑部大判事。12月9日：造東内次官
神護景雲3年（769年） 8月19日：大和介。11月9日：従五位上
宝亀2年（771年） 11月25日：正五位下
宝亀3年（772年） 4月20日：三河守
宝亀7年（776年） 正月7日：正五位上。3月6日：出雲守
宝亀8年（777年） 10月13日：民部大輔
宝亀9年（778年） 正月16日：従四位下
宝亀10年（779年） 9月28日：摂津大夫
天応元年（781年） 4月20日：伊勢守
延暦2年（783年） 6月21日：刑部卿
延暦3年（784年） 正月7日：従四位上。3月14日：伊勢守
延暦4年（785年） 正月7日：正四位上（越階）
延暦5年（786年） 正月24日：近江守
延暦6年（787年） 正月7日：従三位
延暦7年（788年） 7月25日：兵部卿
延暦8年（789年） 正月6日：参議。12月22日：薨去（参議兵部卿従三位）

系譜

父：多治比家主
母：不詳
生母不明の子女
女子：多治比真宗（769-823） - 桓武天皇夫人

参考文献

宇治谷孟『続日本紀 （中）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
宇治谷孟『続日本紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、1995年
宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年
近藤敏喬『古代豪族系図集覧』東京堂出版、1993年

多治比長野は、奈良時代から平安時代初期にかけて、地方官と中央官を歴任し、着実に昇進を重ねた人物でした。彼の足跡は、当時の官僚制度や社会情勢を理解する上で貴重な手がかりとなります。

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