大中臣頼基

大中臣頼基

大中臣頼基（おおなかとみ の よりもと）は、平安時代中期の貴族・歌人として知られています。備後掾・大中臣輔道の子として生まれ、神祇官の官人として、また歌人として、その名を歴史に刻みました。

経歴

頼基は、醍醐朝後期の延長元年（923年）に神祇少祐に任ぜられたのを皮切りに、延長5年（927年）には神祇権大祐、朱雀朝の承平3年（933年）には神祇権少副と、神祇官の要職を歴任しました。天慶2年（939年）には伊勢神宮祭主を兼務し、天慶4年（941年）には従五位下に叙爵されています。

その後も順調に昇進を重ね、天慶8年（945年）には従五位上・神祇大副、天慶9年（946年）には村上天皇の大嘗祭での祭主としての功績により正五位下に昇進、天暦5年（951年）には従四位下に至りました。天徳2年（958年）に卒去。ただし、天暦10年（956年）に73歳で没したとする説もあります。最終官位は祭主従四位下行神祇大副でした。

人物

大中臣氏は代々祭祀を掌る家系であり、頼基もその伝統を受け継ぎました。また、彼は歌人としても才能を発揮し、三十六歌仙の一人に選ばれています。特に、子息である能宣もまた歌人として名を残し、梨壺の五人に数えられるなど、大中臣氏における歌人の祖としての地位を確立しました。宇多上皇からの信任も厚く、『大井川行幸和歌』や『亭子院歌合』への参加のほか、屏風歌・賀歌など、多くの歌会で歌を詠みました。

『拾遺和歌集』以下の勅撰和歌集に10首入集しており、家集として『頼基集』があります。これらの歌は、彼の豊かな感性と卓越した歌の才能を今に伝えています。

逸話

頼基の子である能宣がまだ若かった頃、敦実親王家の子の日に参上し、「ちとせまで限れる松も今日よりは君にひかれてよろづ代や経む」というめでたい歌を詠みました。人々はこの歌を称賛しましたが、父である頼基は、それを聞いてそばにあった枕を手に取り能宣を強く打ちました。そして、「もし天皇の子の日に召し出されたら、いったいこれ以上のどんな祝い歌を詠むつもりなんだ。この愚か者め」と言って戒め、宮廷歌人としての心得を示したと伝えられています。（『袋草紙』より）このエピソードは、頼基の歌に対する厳格な姿勢と、息子への期待の大きさを物語っています。

官歴

昌泰4年（901年）6月：神祇少祐
延喜22年（922年）日付不詳：正六位上
延長5年（927年）正月：神祇権大祐
承平3年（933年）正月：神祇権少副
天慶2年（939年）10月7日：兼祭主
天慶4年（941年）正月7日：従五位下
天慶8年（945年）正月7日：従五位上。10月：神祇大副（超越齊部泰行）
天慶9年（946年）11月19日：正五位下（大嘗会賞）
天暦5年（951年）正月7日：従四位下
天徳2年（958年）、または、天暦10年（956年）卒去（祭主従四位下行神祇大副）

系譜

父：大中臣輔道
母：不詳
妻：不詳
男子：大中臣能宣（921-991）

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