大川駅

大川駅（おおかわえき）

大川駅は、神奈川県川崎市川崎区大川町にある、東日本旅客鉄道（JR東日本）および日本貨物鉄道（JR貨物）に属する鶴見線大川支線の鉄道駅です。川崎市内で最も南に位置する駅であり、大川支線の終着駅としての役割を担っています。駅ナンバリングは「JI 61」が割り当てられています。

駅の概要と運行形態

当駅の最も特徴的な点は、その極めて限られた旅客列車の運行本数にあります。平日であっても、列車が運行されるのは朝の時間帯（主に7時台から8時台）と夕方から夜間にかけての時間帯（主に17時台から20時台）のみです。これらの時間帯でも運行間隔は20分から50分程度とばらつきがあり、日中の時間帯にはおよそ8時間にもわたって列車の運行が全くありません。2009年3月のダイヤ改正以降はさらに本数が削減され、平日の運行本数は一桁台となりました。特に土曜日や休日は運行本数が極端に少なく、2025年現在では朝に2本、夕方に1本の合計3本のみの運行となっています。これは、国鉄時代の昭和50年代に日中も列車が運行され、土休日にも1時間に1～2本程度の列車が設定されていた時期と比較すると、大幅な変化と言えます。

列車が運行されていない時間帯でも、大川駅へアクセスする方法は存在します。隣の武蔵白石駅からは徒歩でおよそ15分程度で到達可能であり、武蔵白石駅構内には当駅への案内図も設置されています。

大川支線は武蔵白石駅を起点としていますが、現在、武蔵白石駅には大川支線専用のホームが存在しません。このため、大川駅を発着する全ての旅客列車は武蔵白石駅を通過し、次の停車駅は安善駅となります。この特殊な経路のため、「区間外乗車の特例」が設けられています。大川駅と武蔵白石駅より先の区間（浜川崎駅方面など）を乗降する際、安善駅で一旦下車しない限り、運賃は武蔵白石駅で乗り換えたものとして計算される措置が取られています。

歴史

大川駅の歴史は、貨物駅として始まりました。大正15年（1926年）3月10日、鶴見臨港鉄道の貨物取扱駅として開設されました。その後、昭和5年（1930年）10月28日には旅客取扱も開始されます。昭和18年（1943年）7月1日に鶴見臨港鉄道が国有化されたことに伴い、鉄道省鶴見線の駅となりました。昭和46年（1971年）3月1日には駅員が配置されない無人駅となり、同時に自動券売機が設置されました。昭和62年（1987年）4月1日の国鉄分割民営化により、JR東日本とJR貨物の駅となります。平成14年（2002年）3月22日にはICカード「Suica」の利用が可能になりました。しかし、貨物取扱については平成20年（2008年）3月10日の運行をもって終了し、同年3月15日のダイヤ改正で貨物列車の設定自体が廃止されました。また、平成28年（2016年）9月30日をもって、自動券売機での切符販売およびICカードへのチャージ機能も終了しています。

駅名の由来

駅名の「大川」は、「製紙王」として知られる実業家、大川平三郎（おおかわ へいざぶろう）に由来しています。彼は日本初の製紙技師であり、多数の製紙会社を創業しました。駅が開設された当時、彼が経営していた富士製紙は、鶴見臨港鉄道を傘下に収めていた浅野財閥や、それを支援していた安田財閥と関係の深い企業でした。富士製紙は、1933年に初代の王子製紙に合併されています。なお、一時期「日清駅」に改称されたとする説も存在し、1935年頃の鶴見臨港鉄道の路線図にはその記載が見られますが、公式な記録としては改称は確認されていません。

駅構造

駅は地上駅であり、単式ホーム1面1線のみを有する構造です。ホームおよび駅舎は線路の西側に配置されています。ホームに接する線路の他にも側線がいくつかありますが、貨物取扱が廃止された現在は使用されていません。無人駅となっており、ホームの武蔵白石駅とは反対側の端に、きっぷうりばの窓口のみがある簡素な木造駅舎が設置されています。改札機としては、簡易Suica改札機が設置されています。

かつては、首都圏で最後まで運行されていた旧形国電であるクモハ12形が、単独で武蔵白石駅との間を行き来していました。1996年3月に3両編成の103系に置き換えられた際、車両の長さに対応するためホームが延長されました。延長された部分は鉄板が敷かれています。駅にトイレは設置されていませんが、過去には駅舎の隣に男女共用の汲み取り式トイレがありました。駅構内には桜の木があり、春の満開時には利用者の目を楽しませます。当駅は川崎市内に位置していますが、JRの特定都区市内制度においては「横浜市内」の駅として扱われます。

貨物取扱

大川駅は、JR貨物の駅としては臨時車扱貨物の取扱駅でしたが、平成20年（2008年）3月15日のダイヤ改正をもって貨物列車の設定が廃止されました。貨物列車設定廃止まで、旅客ホームの脇にある側線から分岐して、駅の東側にあった昭和電工（現在のレゾナック）川崎事業所へ続く専用線が存在していました。この専用線では、扇町駅から工場へ液体塩素を積んだタキ5450形貨車が輸送されていました。末期は週に2～3回、1回につき2両程度が到着する頻度でした。興味深いことに、配線の都合上、貨車の入換作業は「手押し」で行われるという珍しい手法が取られており、この作業は神奈川臨海鉄道がJR貨物から受託して行っていました。この手押しによる入換作業は、間近で見られるスポットとして鉄道ファンに人気がありました。

また、駅の西側に位置する日清製粉鶴見工場へ続く専用線も存在しました。同工場で生産された小麦粉が、タキ24700形貨車を使用して輸送されていましたが、専用トラック輸送への切り替えが進み、1997年6月30日に岩沼駅への発送をもって廃止されました。大川支線を大川駅まで進み、線路の終端にある穀物サイロは、2013年頃に建てられた比較的新しいものですが、その立地は鉄道貨物輸送が行われていた頃と変わらない位置にあります。最も貨物輸送が盛んだった時期には、高崎駅や宇都宮駅、館林駅など、駅に隣接する工場へホキ2200形貨車を用いた穀物輸送も行われていました。

利用状況

JR東日本の駅としての利用状況については、2008年度の1日平均乗車人員は1,009人でした。しかし、無人駅であるため正確な利用状況の把握が困難であるとして、2009年度以降、JR東日本による乗車人員の公表は行われていません。JR貨物の貨物発着トン数についても、2008年の貨物取扱廃止に伴い、現在は統計データがありません。

駅周辺

駅周辺には、最も近いバス停として「日清製粉前」停留所があり、駅から100mほど離れた場所に位置しています。

隣の駅

JR東日本 鶴見線（大川支線）
安善駅 (JI 06) - （武蔵白石駅〔JI 07〕通過） - 大川駅 (JI 61)
前述の通り、大川支線直通列車は武蔵白石駅の大川支線用ホームが撤去されているため、全ての列車が武蔵白石駅を通過します。

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