大庭景義

大庭景義：平安末期から鎌倉初期を駆け抜けた武将

大庭景義（おおば かげよし）は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて活躍した武将です。その名は「景能」とも記されます。桓武平氏の流れを汲み、鎌倉景正の曾孫にあたるとされています。大庭氏は、鎌倉景継が相模国大庭御厨を領有し、大庭を名乗ったことに始まります。景義の父である景宗は、景継の甥とされる一方で、景義自身は鎌倉景経の孫であり、大庭景忠の長男であるという説（『尊卑分脈』）と、大庭景宗の長男であるという説（『系図纂要』、『桓武平氏諸流系図』など）が存在します。

若き日の忠誠と隠遁

相模国大庭御厨内の懐島郷（現在の神奈川県茅ヶ崎市）を本拠地とした景義は、「懐島太郎」を名乗りました。若くして源義朝に忠誠を誓い、保元元年（1156年）の保元の乱では義朝に従って出陣。しかし、この戦で義朝の異母弟である源為朝の矢を受け負傷し、歩行困難となります。その結果、家督を弟の景親に譲り、第一線を退いて懐島郷に隠棲しました。

源頼朝の挙兵と兄弟の対立

治承4年（1180年）、源頼朝が挙兵すると、景義は弟の景親と袂を分かち、頼朝の軍勢に加わります。その後、景親は頼朝に敗れて囚われの身となりますが、頼朝から「助命嘆願をするか」と問われた際、景義はこれを拒否し、頼朝の裁断に全てを委ねたという逸話が残っています。

鎌倉幕府での活躍と出家

鎌倉幕府の草創期において、景義は同族の梶原景時とともに長老格として重きをなしました。寿永元年（1182年）には、頼朝の命により、専光房良暹とともに鶴岡八幡宮の池（後の源平池）の整備を担当します。また、頼朝が藤原泰衡を討伐する際、後白河法皇の院宣を得られず苦慮していたところ、景義は奥州藤原氏は源氏の家人であるため勅許は不要であると主張。さらに、戦陣においては現地の将軍の命令が朝廷の意向よりも優先されるべきだと訴え、その意見が採用されました。

その後、景義は出家し、嫡男の大庭景兼が家督を継ぎます。出家の詳細については、『吾妻鏡』などにわずかな記述があるだけで、不明な点が多いです。記録によれば、建久4年（1193年）8月、景義は相模の有力武士である岡崎義実と共に、老齢を理由に出家したとされています。しかし、そのわずか2年後には、「頼朝公の旗揚げより大功ある身ながら疑いをかけられ鎌倉を追われ、愁鬱のまま3年を過ごして参りました」と書面を奉じ、許されています。このことから、この時期に景義らが何らかの事件により失脚した可能性が考えられます。

参考文献

石井進　『鎌倉武士の実像 ― 合戦と暮しのおきて』　平凡社ライブラリー、2002年。ISBN 4-582-76449-5
『吾妻鏡』

関連作品

* テレビドラマ『草燃える』（1979年、NHK大河ドラマ、演：花沢徳衛）

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