大殺陣

大殺陣（1964年）

『大殺陣』は、1964年 6月3日に公開された日本の時代劇映画です。里見浩太朗（後の里見浩太朗）が主演を務め、工藤栄一が監督、池上金男（後の池宮彰一郎）が脚本を担当しました。東映京都撮影所が製作し、東映が配給したモノクロ作品で、「集団抗争時代劇」と呼ばれるジャンルの一作です。

概要

本作は、史実を基にしたフィクションで、徳川綱重の死因にまつわる謎に着想を得ています。物語は、軍学者の山鹿素行が、大老・酒井忠清の権勢を阻止するため、甲府宰相こと徳川綱重の暗殺を計画し、同志と共に破滅へと向かう姿を描いています。

あらすじ

物語は延宝6年（1678年）を舞台に展開します。4代将軍・徳川家綱の治世下、大老・酒井忠清は、次期将軍の座を狙い、家綱の弟である綱重を擁立しようと画策していました。これに対し、山鹿素行は酒井の野望を阻止するため、弟子たちと暗殺計画を企てます。しかし、計画は教え子の一人である日下仙之助の狂気に端を発し、露見してしまいます。

素行の一党はもとより、無実の幕臣までもが謀反の罪で捕らえられ、拷問の末に処刑されます。酒井の策略により、若年寄・堀田正俊までもが一時幽閉される事態となります。日下は釈放後、酒井暗殺計画への参加を北条氏長に直訴し、姿を消します。

追っ手から逃れた素行一党の中島外記は、友人の神保平四郎の屋敷に身を寄せます。平四郎は外記を匿ったことで謀反の疑いをかけられ、妻・加代は目の前で斬殺されます。逃亡した平四郎は、旗本・浅利又之進に助けられます。

加代の死を知った平四郎は復讐を決意し、素行の姪・みやから酒井暗殺計画を聞かされます。みやは平四郎を仲間の星野友之丞の元へ連れて行き、平四郎は素行一党に加わることを決意します。平四郎は浅利を誘いますが、浅利は拒否します。

暗殺隊の頭目だった岡部源十郎が裏切ろうとしたため、平四郎は彼を斬ります。瀕死の岡部は、素行の計画を北条に明かして息絶えます。一方、出家していた日下がみやと再会し、強引に仲間に加わります。刺客は平四郎、星野、日下、別所隼人、渡海八兵衛、助七の6人に決定しました。

素行は刺客たちに、標的を酒井から綱重に変更することを伝えます。綱重一行を吉原におびき寄せ、襲撃するという計画が実行に移されますが、計画は渡海八兵衛の臆病さから破綻します。平四郎たちは奮戦するも、多勢に無勢で討ち死にしてしまいます。

駆けつけた酒井と北条は、辛くも生き残った綱重を見舞います。そこへ浅利が現れ、惨殺された平四郎の姿を見て激昂し、綱重と北条を斬り殺しますが、自身も討たれてしまいます。酒井は後ろ盾を失い、錯乱状態に陥ります。素行は、その様子を複雑な表情で見つめるのでした。

登場人物

神保平四郎: 御書院番。巻き込まれる形で素行一党に加わる。
浅利又之進: 小普請。平四郎を匿う。平四郎の死をきっかけに、綱重らを討つ。
山鹿素行: 軍学者。暗殺計画の首謀者。
山鹿みや: 素行の姪。平四郎を一党に誘う。
星野友之丞: 小普請。素行の弟子。暗殺隊の指揮を執る。
日下仙之助: 小十人組。素行の弟子。精神を病み、事件を混乱させる。
別所隼人: 代官手付。素行の弟子。
渡海八兵衛: 素行の門弟。吉原での襲撃計画で臆して逃亡する。
助七: 素性不明の無宿人。
岡部源十郎: 小納戸役。素行の弟子。裏切ろうとしたため、平四郎に斬られる。
徳川綱重: 参議。将軍・徳川家綱の弟。
酒井忠清: 大老。綱重を次期将軍に据えようと企む。
北条氏長: 大目付。酒井の腹心。
堀田正俊: 若年寄。酒井と対立し、幽閉される。

キャスト

里見浩太郎：神保平四郎
河原崎長一郎：別所隼人
平幹二朗：浅利又之進
宗方奈美：山鹿みや
大木実：北条氏長
大坂志郎：星野友之丞
砂塚秀夫：助七
稲葉義男：渡海八兵衛
加賀邦男：林甚兵衛
安部徹：山鹿素行
大友柳太朗：酒井忠清

スタッフ

監督：工藤栄一
企画：松平乗道
脚本：池上金男
撮影：古谷伸
音楽：鈴木静一

製作の経緯

企画は、渡邊達人が提案したサラエボ事件の翻案を基に、松平乗道が徳川の五代将軍争いをプロットに採用し、池上金男が脚本を執筆しました。工藤栄一監督は、当初の脚本に不満を持ち、池上金男と議論の末、脚本を大幅に修正しました。

タイトル

タイトルは、東映京都所長に復帰した岡田茂が命名しました。

評価

本作は興行収入的には成功しませんでしたが、週刊読売や荻昌弘からは、その斬新な演出や脚本が高く評価されました。

後世への影響

本作を含む「集団抗争時代劇」は、その後の東映作品に大きな影響を与え、任侠映画へと発展していきました。

エピソード

撮影期間中、工藤栄一監督と撮影監督の古谷伸が飲食店で酔って暴れ、逮捕されるという事件が起きました。

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