新井章吾

新井章吾は、安政3年（1856年）に下野国都賀郡吹上村（現在の栃木県栃木市）の豪農の家に生まれました。幼少期より学問に励み、吹上藩の藩校や壬生の育英舎で学びました。明治維新後、明治10年（1877年）には吹上村の戸長に就任し、地方行政に携わります。

明治13年（1880年）からは、自由民権運動に身を投じ、自由党に入党。郷里を中心に運動の普及に尽力しました。しかし、明治15年（1882年）には、官吏侮辱罪や集会条例違反で逮捕され、5ヶ月間収監されるという苦難も経験します。さらに、大阪事件への関与を疑われ、朝鮮渡航部隊の責任者として捕らえられ、重懲役9年の判決を受けます。政治活動は一時中断を余儀なくされました。

明治22年（1889年）に大赦によって釈放された後、県会議員に復帰。第1回衆議院議員総選挙では栃木県第2区から初当選し、その後6期連続で当選を果たしました。しかし、自由党内での対立や不協和音は収まらず、星亨との確執をきっかけに「関東自由党」を結成、薩摩閥との連携を模索しますが、いずれも成功しませんでした。明治25年（1892年）には自由党を離党し、大井憲太郎らとともに東洋自由党を結成するなど、政界内を転々としました。明治29年（1896年）には、拓殖務大臣であった高島鞆之助の要請で、衆議院議員の身分のまま拓殖務省北部局長に就任しますが、同省の廃止によってすぐに辞任しています。

明治31年（1898年）には、自由党の後身である憲政党に復帰。その後、立憲政友会に合流しましたが、第7回衆議院議員総選挙で落選します。しかし、明治37年（1904年）の第9回衆議院議員総選挙で7回目の当選を果たし、政界に復帰しました。政治家として活躍する傍ら、実業家としての顔も持ち、宇治川水力電気会社の創設に尽力しましたが、会社設立直前の明治39年（1906年）に東京で51歳で急逝しました。

新井章吾の墓所は、青山霊園と郷里である吹上町の専福寺にありますが、2022年現在、吹上町の墓所は無縁墳墓となっています。新井章吾は、波乱に満ちた生涯を送った政治家であり、その功績は後世に語り継がれています。

親族
室：新井タネ（昭和29年4月15日没）
子：新井胖（朝鮮総督府判事、1938年12月31日没）
* 子の妻：新井静（昭和55年11月10日没）

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