大黒島 (厚岸町)

大黒島（だいこくじま）

大黒島は、北海道厚岸郡厚岸町に位置する無人島です。アイヌ語ではホロモシリ、モシリカ、シューオマイなどと呼ばれていました。厚岸湾の入口に位置し、海鳥の繁殖地として知られています。1951年からは島の南西部が「大黒島海鳥繁殖地」として国の天然記念物に指定されています。

地理

大黒島は、床潭漁港から南へ約4km、対岸のピリカウタからは1.8kmの距離にあります。島の沿岸部はわずかな砂地を除き、高さ50～80mの崖に囲まれた海食台となっています。中央部には東西に走る沢があり、東側の小川は海岸で滝となっています。島の南側は起伏が大きく、南西方向に突き出た場所に最高標高地点があり、灯台が設置されています。また、北端には砂嘴が北へ200mほど伸びています。

自然

島全体としては樹木が少なく、海岸草原が広がっています。沢沿いにはミヤマハンノキ、イタヤカエデ、ダケカンバなどがわずかに見られ、マユミ、エゾニワトコ、エゾスグリなどの低木も生息しています。草原にはエゾヨモギ、オオイタドリ、イワノガリヤス、ヨブスマソウ、アキタブキなどが生育しています。崖地にはキリンソウ、ユキワリコザクラ、ハマハタザオなどが群生しています。かつては鬱蒼とした森林があったものの、第二次世界大戦中に要塞化された際に伐採されたという証言もあります。

大黒島は、北方系の海鳥の重要な繁殖地です。特にコシジロウミツバメは数十万羽単位で営巣しています。その他、オオセグロカモメ、ウミウ、ウトウなどが繁殖し、チシマウガラス、オジロワシ、オオタカ、ハヤブサ、ウミガラス、エトピリカといった希少な鳥類も確認されています。1951年より南西部の119,337平方メートルが天然記念物に指定され、1966年には全島が特別鳥獣保護区に指定されました。山階鳥類研究所や環境省による鳥類モニタリング調査も定期的に行われています。

哺乳類としてはエゾヤチネズミが生息しています。島の周囲には100頭以上のゼニガタアザラシが生息していることも確認されています。

歴史

島の中央部やや南には、大黒島チャシの跡が残っています。このチャシは、北東-南西に72.5m、北西-南東に40mと比較的規模が大きいものです。

1790年には最上徳内によって「大黒島」の名前が記録され、1809年には幕府の役人によって、和人の漁民とアイヌの人々が共に漁業を行っていた様子が記録されています。アイヌ語で大黒島を意味する「ホロモシリ」は、隣の厚岸小島（ポンモシリ）との対比から名付けられました。

1859年には松浦武四郎が、大黒島の形状が大黒天の頭に似ていることが名前の由来であると記述しています。

明治時代以降、大黒島では昆布漁が盛んに行われ、夏には厚岸から漁民が出稼ぎに来ていました。1890年には厚岸灯台が設置されました。大正時代初期には5世帯が入植し、「気楽町」と呼ばれる集落が形成されました。漁業のほか、ニシンの雇用労働にも従事していました。最盛期には金子漁場と中野漁場の2つの番屋があり、多くの人夫が働いていました。金子定吉という人物は、大黒島での漁業経営で巨万の富を得ました。

第二次世界大戦中、大黒島は要塞化され、高角砲陣地や海軍兵舎などが建設されました。しかし、これらの軍事施設が実際に使用されることはほとんどありませんでした。1945年の大時化による土砂災害で気楽町が壊滅し、島民は対岸に移住しました。その後、昆布漁の時期に季節的に居住する人々がいましたが、2005年以降は完全に無人島となっています。

施設

教育

かつて島には学校がなく、灯台守が島民の子どもたちに読み書きを教えていました。1938年に床潭小学校大黒島分教室が設置されましたが、第二次世界大戦中に閉校となりました。

厚岸灯台

1890年に設置された厚岸灯台は、島の南端に位置しています。灯台の敷地面積は120,000平方メートルと、日本の灯台の中で最も広いです。1937年にコンクリート造に改築され、霧笛信号やレーマークビーコン局も設置されました。1987年からは無人化されています。

神社

島には亀甲神社があります。かつては山上にありましたが、1945年の時化で野村番屋の横に移されました。島に定住者がいなくなった後も、野村氏によって毎年祭りが行われています。

大黒島は、豊かな自然と歴史を持つ魅力的な島です。現在は無人島となっていますが、海鳥の繁殖地として、また、かつて人々の生活の舞台であった場所として、その価値は失われることはありません。

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