天野隆重

天野隆重

天野隆重（あまの たかしげ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将であり、大内氏、そして毛利氏の家臣として活躍しました。

出自

安芸天野氏は、藤原南家工藤氏の流れを汲み、安芸国に土着した国人です。隆重は、天野政貞を祖とする金明山天野氏の系統に属します。安芸には、天野興次・天野興定・天野元定といった生城山天野氏の一族も存在しました。

生涯

若年期と大内氏への従属

文亀3年（1503年）、安芸国金明山城を本拠とする国人、天野元貞の長男として誕生しました。当初は大内氏に従属していましたが、天文20年（1551年）の大寧寺の変で大内義隆が陶隆房（陶晴賢）の謀反により命を落とすと、毛利元就に鞍替えしました。

毛利氏家臣として

隆重の妻が福原貞俊の妹であったことが縁となり、毛利元就から厚い信頼を得ました。毛利氏の傘下に入ってからも、ある程度の独立性を保ちながら、厳島の戦いや防長経略など、数々の戦で武功を重ねました。尼子氏が滅亡すると、その旧領である出雲国の要衝、月山富田城の城代に任じられました。

月山富田城の防衛戦

永禄12年（1569年）、尼子勝久率いる尼子再興軍が隠岐国から出雲に上陸し、旧領奪還を目指して動き出しました。これに呼応して、尼子氏の残党も各地で蜂起し、尼子再興軍は6,000人を超える勢力となりました。当時の毛利氏は、その主力を北九州の大友氏との戦いに投入しており、月山富田城を守備する兵力は僅か300人に過ぎませんでした。

しかし隆重は、城主である毛利元秋と協力して一計を案じます。降伏する旨を偽った書状を尼子再興軍に送り、油断させて月山富田城へと誘い込み、奇襲を仕掛けました。この奇襲により、秋上宗信率いる2,000の兵を打ち破るという大戦果を挙げました。

この敗戦後、尼子軍は月山富田城に籠城する毛利軍を伏兵で殲滅しようと企て、山中幸盛らが率いる1,000の伏兵を城下の浄安寺に潜ませました。しかし、隆重は事前にこの動きを察知し、浄安寺に静かに接近。寺内へ鉄砲や矢を集中砲火を浴びせ、再び尼子軍を撃退しました。この連敗により、尼子側の戦意は大きく低下し、城攻めは膠着状態に陥りました。その後、毛利軍本隊が大軍を率いて出雲国へ進軍し、尼子軍による月山富田城の包囲を突破し、城を解放しました。

晩年

天正12年（1584年）3月7日、隆重は82歳でその生涯を終えました。墓所は山口県岩国市周東町西午王ノ内の大梅山通化寺にあり、隆重とその妻は、子である元嘉夫妻と共に眠っています。

参考文献

岡部忠夫編『萩藩諸家系譜』（マツノ書店、1999年復刻）
『萩藩閥閲録』巻73「天野求馬」

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