奥鐘山

奥鐘山の概要

奥鐘山（おくかねやま）は、富山県黒部市に位置し、標高1,543メートルを誇る美しい山です。この山は飛騨山脈の一部である後立山連峰に属し、その山体は黒部峡谷の右岸に面しています。奥鐘山はその特異な自然美から、「黒部峡谷附猿飛ならびに奥鐘山」として国の特別天然記念物及び特別名勝に指定されています。

地理と特徴

後立山連峰の唐松岳から延びる尾根に位置し、奥鐘山の西壁は日本を代表する大岩壁です。この部分は幅1キロメートル、高さ800メートルという圧倒的なスケールを持ち、クライミングの挑戦者たちを魅了しています。特に、この岩壁は「黒部の怪人」として知られており、黒部川の対岸の水平歩道からは、その堂々たる姿を楽しむことができます。また、この西壁は黒部の三大岩壁として、クライミング界でも特に名高い場所に数えられています。

歴史的背景

1938年12月27日、奥鐘山は悲劇的な出来事の現場となりました。この日、仙人谷ダムの建設作業員宿舎が泡雪崩に襲われ、84名の命が奪われるという惨事が発生しました。宿舎は黒部川対岸の志合谷にあったため、泡雪崩の影響で上層部分が浮き上がり、600メートル先にある奥鐘山の岩壁に激突したことが推測されています。この惨事は登山やクライミングの危険性を改めて考えさせる出来事でした。

クライミングの名所

1960年以降、紫岳会による西壁の初登攀が成功し、奥鐘山は多くのクライマーにとっての聖地と化しました。この山には数十本の登攀ルートが存在し、その多くは難易度が高く設定されており、特にRCC IIグレードの5級や6級の難度を持つルートが多くあります。また、この山は挑戦者にとって耐久力と技術が試される場であり、関心を持つ登山者が年々増加しています。

山名の由来

奥鐘山という名称は、近隣の鐘釣温泉の左岸に位置する西鐘釣山、右岸にある東鐘釣山から由来していると考えられています。これらの山々は共に釣鐘の形をしているため、奥鐘山もまた同様の特徴を持つ山ということで名付けられました。

登山情報

奥鐘山への登山道は整備されておらず、山頂までの道のりは過酷です。祖母谷温泉から唐松岳方面への道を利用することができる一方、尾根に入ると藪漕ぎが必要となります。また西壁を登るためには、黒部峡谷鉄道の欅平駅から黒部川を遡行し、2時間程で岩壁の基部に着くことが可能です。様々なルートが存在しますが、登るにはそれなりの技術と経験が求められます。

周辺山小屋

登山の途中にはいくつかの山小屋があります。祖母谷温泉小屋は山頂から約1.4キロメートル、餓鬼山避難小屋は唐松岳への登山道上にあり、同じく約2.9キロメートルの距離です。また、阿曽原温泉小屋は水平歩道上に位置し、山頂から約3.5キロメートルとなっています。これらの施設は登山者にとって重要な休息場所となります。

最後に

奥鐘山はその美しい自然とともに、厳しい歴史を背負った山です。登山愛好家にとって、挑戦しがいのある場所であると同時に、自然の雄大さを感じさせてくれる特別な存在です。

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