好色元禄(秘)物語

あらすじ

元禄時代の京。華やかな都の片隅、じめじめとした長屋に住むお夏とお七は対照的な姉妹。姉のお夏は寺の住職の妾でありながら、玉の輿を夢見て呉服問屋の若旦那を誘惑します。一方、妹のお七は夫と共に店を持つことを夢見て健気に働くものの、生活は一向に楽になりません。そんな中、夫の裏切りからお七の運命は大きく狂い始めます。男たちに凌辱されたお七は、復讐のため、そして自らの供養のため、男を求め続ける道へと進みます。お夏もまた、色仕掛けで手に入れたはずの男に裏切られ、逆上し、その父親を篭絡するなど、欲望渦巻く世界で奔走します。そんな彼女たちに、一人の若い坊主が関わっていきます。後の井原西鶴です。

キャスト

お夏：ひし美ゆり子
お七：橘麻紀
西鶴：山田政直
世之介：中林章
忠兵衛：坂本長利
喜兵衛：名和宏
久松：川谷拓三
弥市：北村英三
お新：三井マリア
手代：唐沢民賢
清海：汐路章
その他、個性的な俳優たちが脇を固めています。

制作の背景

本作は、東映の社員監督であった関本郁夫が、会社からの「トルコ嬢のドキュメント」製作の命を受け、その成果が認められたことから監督に抜擢されました。脚本は、日活ロマンポルノで実績のある田中陽造が担当。タイトルは当初『好色一代女』でしたが、岡田茂東映社長の意向で現在のタイトルに変更されました。

キャスティングの裏話

当初は橘麻紀主演の企画でしたが、関本監督がひし美ゆり子の魅力に惹かれ、彼女を主演に抜擢。この決定に、当時売り出し中であったピラニア軍団が反発しましたが、監督の強い意志により、ひし美ゆり子が主演を務めることとなりました。ひし美ゆり子は、本作以前は可愛らしいイメージの女優でしたが、本作以降、セクシーな魅力を開花させ、ヴァンプ女優としての地位を確立しました。

撮影とエピソード

撮影中、岡田社長の鶴の一声で、当時話題の「潮吹き」をアピールしていた窪園千枝子が出演することになりました。撮影では、実際に潮を吹くシーンは表現できないため、パロディとして描かれましたが、当時の観客には非常に受け入れられたといいます。また、同時期に撮影されていた大作映画『神戸国際ギャング』の陰に隠れながらも、監督は強い対抗心を持って撮影に挑み、その結果、本作は高い評価を得ることとなりました。

製作費とセット

本作の製作費は2500万円と、当時の東映作品の中では小規模でしたが、京都撮影所の時代劇セットを活かし、本格的な時代劇として撮影されました。ひし美ゆり子自身も、本作のセットのクオリティの高さに感銘を受けたと語っています。

宣伝と評価

当時、マスメディアは窪園千枝子を大きく取り上げましたが、ひし美ゆり子はほとんど注目されませんでした。しかし、その体当たりの演技は映画祭で認められ、主演女優賞と監督賞を受賞。公開当時は無視されることも多かった本作ですが、後年、そのエネルギー溢れる作風が高く評価されるようになりました。

その他

ひし美ゆり子自身が、本作のニュープリントを自費で制作したというエピソードも残っています。

同時上映

『神戸国際ギャング』

参考文献

『日本映画俳優全集 女優編』キネマ旬報社, 1980年
関本郁夫『映画人(かつどうや)烈伝』青心社, 1980年
ひし美ゆり子『セブン セブン セブン わたしの恋人ウルトラセブン』小学館, 1997年
杉作J太郎、植地毅『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』徳間書店, 1999年
川崎宏『狂おしい夢 不良性感度の日本映画 東映三角マークになぜ惚れた!? 』青心社, 2003年
鈴木義昭『昭和桃色(ピンク)映画館 まぼろしの女優、伝説の性豪、闇の中の活動屋たち』社会評論社, 2011年
ひし美ゆり子、樋口尚文『万華鏡の女 女優ひし美ゆり子』筑摩書房, 2011年

外部リンク

好色元禄㊙物語 - allcinema
好色元禄㊙物語 - KINENOTE
好色元禄㊙物語 - IMDb（英語）

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