姉埼神社

姉埼神社

姉埼神社（あねさきじんじゃ）は、千葉県市原市姉崎に位置する神社で、古くは式内社として、また近代では県社として知られています。地名としては「姉崎」ですが、神社名は「姉埼」と表記します。

祭神

姉埼神社では、以下の五柱の神々が祀られています。

主祭神
支那斗弁命（しなとべのみこと）：風の神であり、社伝では島穴神社祭神の志那都比古尊の妻または姉とされています。
配祀神
日本武尊（やまとたけるのみこと）
天児屋根命（あめのこやねのみこと）
塞三柱神（さえのみはしらのかみ）
大雀命（おおささきのみこと）：仁徳天皇を指します。

歴史

創建

『古事記』や『日本書紀』によると、景行天皇の時代に日本武尊が東征の際、暴風雨に遭い、妃である弟橘姫の犠牲によって上総に上陸したとされています。社伝では、この時日本武尊が現在の神社がある宮山台で弟橘姫を偲び、風の神である支那斗弁命を祀ったのが創建と伝えられています。また、日本武尊の死後、父である景行天皇がその足跡をたどり、姉埼神社に日本武尊を合祀したとされています。

さらに、成務天皇の時代には、上海上国造の忍立化多比命が天児屋根命と塞三柱神を合祀し、履中天皇の時代には、忍立化多比命の孫である忍兼命が大雀命を合祀したとされています。これらの伝承の真偽は不明ですが、姉崎一帯には姉崎古墳群が分布しており、古代には上海上国造の勢力中心地であったと推測されています。

概史

国史によれば、元慶元年（877年）には「姉前神」に正五位下勲五等の神階が授けられ、元慶8年（884年）には正五位上勲五等に昇叙されました。

延長5年（927年）に編纂された『延喜式』神名帳には、「姉埼神社」として記載され、式内社に列せられています。平安時代中期の『和名抄』では、この地は「海上郡馬野郷」にあたるとされています。

かつては、同じく式内社である島穴神社と深い関係があり、両社の間で神輿の往来があったと伝えられています。

明治維新後、近代社格制度では県社に列しました。

昭和61年（1986年）には火災により本殿と神木が焼失しましたが、その後再建され、神木も焼け残った芽から育て直されています。

神階

元慶元年（877年）5月17日：従五位上勲五等から正五位下勲五等に昇叙（表記は「姉前神」）
元慶8年（884年）7月15日：正五位下勲五等から正五位上勲五等に昇叙（表記は「姉前神」）

境内

境内には、浅間神社（富士塚上に鎮座）をはじめとするいくつかの摂末社があります。

伝承

姉埼神社境内には松の木が育たないという特徴があります。これは、以下の伝承に由来するとされています。

旅に出たままなかなか帰ってこない志那都比古尊を、支那斗弁命が「待つのはつらい」と嘆いたことから、「待つ」に通じる「松」が忌まれるようになった。
支那斗弁命と志那都比古尊がこの地を訪れた際、姉神である支那斗弁命が先に到着して弟神を待ったため、「あねがさき」という地名になった（この時「待つ身はつらい」と言ったという伝承もある）。
元々の地名は「姉ヶ松」であったが、この地では姉妹がいる家から妹が先に嫁ぐことが多く、「姉が待つ」という地名が原因と考えられ、「姉が先」に嫁げるようにとの願いを込めて「あねがさき」に改名された。

また、氏子区域内では正月に松を飾らない風習があり、門松の代わりに榊を用いた「門榊」を飾ります。その他、魔除けとして鰯の頭を飾ったり、市原市が配布する門榊カードで代用する家庭もあります。

現地情報

所在地: 千葉県市原市姉崎2270
交通アクセス: JR内房線 姉ケ崎駅から徒歩約10分
周辺: 姉崎古墳群（姉崎天神山古墳、姉崎二子塚古墳など）

脚注

参考文献

神社由緒書「姉埼神社 参拝のしおり」
明治神社誌料編纂所 編「姉崎神社」『府県郷社明治神社誌料』明治神社誌料編纂所、1912年。
『明治神社誌料 府県郷社 上』（国立国会図書館デジタルコレクション）539-540コマ参照。
「姉埼神社」『日本歴史地名大系 12 千葉県の地名』平凡社、1996年。
鈴木仲秋 著「姉崎神社・島穴神社」、谷川健一編 編『日本の神々 -神社と聖地- 11 関東』白水社、1984年。

関連項目

島穴神社
上海上国造
不入斗 (市原市)

外部リンク

姉埼神社 - 千葉県神社庁監修「神社のひろば」

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