上海上国造

上海上国造（かみつうなかみのくにみやつこ）

上海上国造は、古代の上総国、現在の千葉県市原市の一部を支配した国造です。別名、上菟上国造とも呼ばれています。その領域は養老川流域に広がり、古くからヤマト王権と密接な関係を持っていました。

概要

3世紀に築造されたとされる神門古墳群や、王賜銘鉄剣が出土した稲荷台1号古墳が存在することから、この地域が早くからヤマト王権の影響下にあったことが伺えます。

『万葉集』には、この地が水上交通の要衝であったことを示す歌が残されています。「夏麻引く海上潟の沖つ渚に船はとどめむ小夜ふけにけり」という歌は、当時の海上交通の重要性を物語っています。

また、上海上国造の領域と下海上国造の領域の間に武社国造の領域が挟まっていることから、房総における国造制の展開には少なくとも二段階の変遷があったと考えられています。

5世紀頃までは、下海上国と合わせて、千葉県中部から茨城県、埼玉県、東京都にかけての一帯を支配する強大な勢力であったとする説もあります。しかし、6世紀になると、中央から進出した武社国によって上・下に分割され、さらに村田川流域の菊麻国造の台頭によって、上海上国造は衰退を余儀なくされました。

養老川下流の南岸に位置する姉崎古墳群は、上海上国造一族の墳墓と考えられています。4世紀後半に築かれた全長130メートルの姉崎天神山古墳、5世紀前半の全長86メートルの釈迦山古墳、そして5世紀後半の全長103メートルの姉崎二子塚古墳などが存在します。しかし、6世紀以降に築造された古墳は徐々に規模が縮小しており、このことからも、上海上国造の衰退を裏付けることができます。

氏族

『古事記』によれば、上海上国造の祖は天穂日命の子である建比良鳥命とされています。

『国造本紀』によると、成務天皇の時代に天穂日命の八世孫である忍立化多比命が国造に任命され、その孫である久都伎直が応神天皇の時代に下海上国造になったとされています。

上海上国造は、出雲[[国造]]、无邪志国造、下海上国造、伊自牟国造、遠淡海国造などと同系の出雲氏が世襲したと考えられています。

『続日本紀』には、神護景雲元年（767年）に海上郡の人である檜前舎人直建麻呂に上総宿禰の姓が与えられ、宝亀6年（775年）には外従五位下の上総宿禰建麻呂が隼人正に任じられたという記述があります。これらの記述から、建麻呂は上海上国造の子孫であり、上総氏の祖であると考えられています。

また、姉埼神社には、上海上国造に任じられた忍立化多比命が天児屋根命と塞三柱神を祀り、忍立化多比命の孫である忍兼命が大雀命を合祀したとされています。姉崎古墳群は、姉埼神社を氏神として祀っていた上海上国造一族の墳墓と考えられています。

参考文献

『國史大辭典』（吉川弘文館）
坂本太郎・平野邦雄『日本古代氏族人名辞典』（吉川弘文館）
『日本古代人名辭典』（吉川弘文館）
『日本史広辞典』（山川出版社）
『神道大辞典』（臨川書店）
『日本史総覧』（新人物往来社）
宝賀寿男『越と出雲の夜明け』（法令出版）2008年

関連項目

国造の一覧

外部リンク

* 房総の古墳を歩く 上海上国の古墳

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