姚弋仲

姚弋仲（よう よくちゅう）：後秦の礎を築いた羌族の英雄

姚弋仲（279年? - 352年3月）は、五胡十六国時代に活躍した羌族の酋長であり、後の後秦の基礎を築いたことで知られています。南安郡赤亭（現在の甘粛省定西市隴西県西部）を本拠地とし、その生涯は動乱の時代を象徴するものでした。

生涯

幼い頃から聡明で勇猛、そして剛毅な性格であった姚弋仲は、困窮した人々への救済を厭わず、部族からの信頼を集めました。312年、永嘉の乱を避けて東へ移住する際には、数万の人々が彼に従ったと伝えられています。

前趙への帰順と活躍

323年、前趙の劉曜が隴西の陳安を討伐すると、姚弋仲は平西将軍に任じられ、平襄公に封じられました。その後、後趙が前趙を滅ぼすと、姚弋仲は石虎に帰順し、その才能を発揮します。石虎への進言により、秦・雍の豪族を関東へ移住させ、自身の勢力拡大にも繋げました。

石虎への忠義と諫言

石虎が政権を掌握すると、姚弋仲はその簒奪を非難し、石虎を諫めました。また、梁犢の反乱鎮圧では、自ら先頭に立って鎮圧に貢献し、石虎からの信頼をさらに深めました。姚弋仲は、石虎から剣履上殿、入朝不趨の特権を与えられ、西平郡公にまで進封されています。

後趙の混乱と東晋への帰順

石虎の死後、後趙は内紛により混乱します。姚弋仲は、蒲洪や石閔らと共に石遵を擁立しますが、後に石閔が権力を掌握すると、石祗を擁立して冉閔に対抗しました。しかし、石祗が冉魏軍に敗れると、姚弋仲は東晋への帰順を決意します。

晩年と遺訓

東晋に帰順後、姚弋仲は使持節・六夷大都督などの要職を歴任し、高陵郡公に封じられました。352年に病没する際、息子たちに「晋に帰順し、臣節を尽くすように」と遺言を残しました。彼の死後、息子の姚襄がその地位を継承し、後に姚萇が後秦を建国することになります。

人物像と逸話

姚弋仲は、清廉で剛直な人物であり、その言動には遠慮がありませんでした。石虎は彼の直言を重んじ、朝廷の重要会議に必ず参加させたといいます。また、部下を寛大に扱う一方で、規律を乱す者には厳しく対処しました。例えば、石虎の寵姫の弟が陣営で騒ぎを起こした際には、斬首を命じようとしたという逸話が残っています。

子孫

姚弋仲には42人の息子がおり、その中には姚襄、姚萇、姚緒など、後世に名を残す人物が多くいます。姚萇は後秦を建国し、姚弋仲は景元皇帝と追諡されました。

出自

姚弋仲は、有虞氏（帝舜）の末裔と伝えられています。帝禹が帝舜の少子を西戎に封じたことが始まりとされ、その子孫は代々羌族の酋長を務めてきました。

姚弋仲は、五胡十六国時代の動乱期において、その知略と人望によって一族を率い、後の後秦建国へと繋がる重要な役割を果たした英雄と言えるでしょう。

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