孫秀 (西晋)

孫秀（そん しゅう）

孫秀（? - 301年）は、西晋時代の政治家であり、字は俊忠、琅邪郡の出身です。司馬倫の寵臣として知られ、その権勢を背景に西晋の政局を大きく揺るがしました。

生涯

司馬倫との出会い

孫秀の一族は代々五斗米道を信仰しており、彼自身もその信者でした。琅邪郡の小吏であった孫秀は、狡猾で貪欲な性格から、潘岳に憎まれ鞭打ちを受けたと言われています。しかし、琅邪王として赴任してきた司馬倫に取り入り、その信頼を得ることに成功しました。司馬倫は学がなく文書の読み書きも苦手でしたが、孫秀が文書作成を代行するようになると、その文才を高く評価しました。

277年、司馬倫が趙王に改封されると、孫秀も趙に移り、侍郎に任じられました。その後も司馬倫の下で昇進を重ね、その謀略を一手に引き受けるようになりました。

関中での失態と危機

290年、司馬倫が関中の守備を任されると、孫秀もこれに同行しました。しかし、司馬倫は関中を混乱させ、氐・羌の反乱を招いてしまいます。296年に司馬倫は更迭され、代わりに梁王司馬肜が関中の守備に就きました。雍州刺史の解系は、孫秀を処刑して氐・羌に謝罪するべきだと主張しましたが、孫秀の友人である辛冉の弁護により、死罪を免れました。

その後、司馬倫が洛陽に召喚されると、孫秀もこれに随行し、皇后賈南風に取り入ることで、司馬倫の地位向上を図りました。しかし、司空の張華らの反対により、その目論見は阻まれました。

皇太子廃立と司馬倫の野望

299年、皇太子司馬遹が賈南風によって廃位されると、司馬倫に協力を求める動きが出ました。孫秀は一旦はこれに同意したものの、司馬倫に対し、賈南風が司馬遹を害するのを待ち、その仇討ちを大義名分に賈南風を排除するよう進言しました。

孫秀は賈南風に対し、司馬雅らが彼女を廃そうとしていると吹き込み、司馬遹の殺害を促しました。300年、司馬倫と孫秀は政変を起こし、賈南風を廃位し、賈氏一派を処刑しました。司馬倫は帝位簒奪の野心を抱き、孫秀と謀議して、張華・裴頠らを処刑しました。

権力掌握と専横

司馬倫が権力を掌握すると、孫秀も中書令に任じられ、兵権を握りました。司馬倫は政治の実務を孫秀に委ねたため、孫秀の下に権力が集中するようになりました。司馬倫は恵帝に九錫を下賜するよう上奏しましたが、劉頌の反対に遭いました。しかし、最終的に九錫は下賜され、孫秀は侍中・輔国将軍に任じられました。

301年、司馬倫が帝位を簒奪すると、孫秀は侍中・中書監・驃騎将軍に任じられ、政治を専断するようになりました。孫秀は多くの忠臣・良将を殺害し、私欲を満たしたと言われています。また、張林との対立が激化し、最終的に張林を処刑しました。

最期

孫秀は、斉王司馬冏、成都王司馬穎、河間王司馬顒の三王を警戒し、懐柔を図りました。しかし、司馬冏が挙兵し、司馬穎、司馬顒らがこれに呼応すると、孫秀は討伐軍を派遣しました。しかし、百官や諸将は司馬倫と孫秀を殺害しようと機会を窺うようになり、孫秀は中書省から外に出なくなりました。

301年4月7日、王輿らが兵を率いて宮中に侵入すると、孫秀は逃亡を図りましたが、趙泉に斬り捨てられました。司馬倫の側近も尽く処刑され、司馬倫も金墉城に幽閉された後に殺害されました。司馬倫は最期に「孫秀が我を誤らせた！」と叫んだと伝えられています。

孫秀の生涯は、西晋の内乱期における権力闘争と、その中で翻弄された人々の姿を象徴するものとして、歴史に刻まれています。

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