安仁神社

安仁神社

安仁神社（あにじんじゃ）は、岡山県岡山市東区西大寺に位置する神社です。式内社（名神大社）であり、かつては備前国の一宮として知られていました。現在は神社本庁の別表神社となっています。

祭神

現在の祭神は以下の3柱です。

主祭神：五瀬命（いつせのみこと）
配神：稲氷命（いなひのみこと）、御毛沼命（みけぬのみこと）

古くは「兄神社」と称されていたと伝えられており、初代天皇である神武天皇の「兄」にあたる五瀬命を主祭神としています。明治時代に現在の祭神が定められました。

当社には古くから様々な祭神説が存在します。平安時代の参議である秋篠安仁（あきしののあに）や右近衛大将安倍朝臣安人（あべのあそんやすひと）、和珥氏の祖神、天照大神、五十狭芹彦命（吉備津彦命）、あるいは単に当地の地主神であるとする説もあり、確定されていません。1870年（明治3年）の『神社明細帳』では祭神が「未詳」とされています。現在の五瀬命説は、1875年（明治8年）に安仁神社社務が作成した『安仁神社御傳記』に初めて現れます。1925年（大正14年）の『安仁神社誌』では、社名に神をつけた「安仁神」とされています。第二次世界大戦後の1952年（昭和27年）に作成された『神社明細帳』で再び五瀬命とされ、現在に至ります。

歴史

創建年代は不詳ですが、社伝によれば、神武東征の際に五瀬命が数年間この地に滞在し、神武天皇が即位後に五瀬命ら皇兄たちを祀って「久方宮（ひさかたのみや）」と称したのが起源とされています。

国史における初見は、『続日本後紀』の841年（承和8年）2月8日条の「安仁神預名神焉（あにのかみみょうじんにあづかる）」です。平安時代後期の『延喜式神名帳』では、備前国で唯一の名神大社に列せられています。

元々は当社が備前国一宮となるはずでしたが、939年（天慶2年）の天慶の乱において、当社が藤原純友方に味方したため、一宮の地位を朝廷より剥奪されたとされています。その後、備前国一宮は、天慶の乱勃発時に朝廷に味方した備中国の一宮である吉備津神社から御霊代を分祀して創建された吉備津彦神社（岡山市北区一宮）に移ったと伝えられています。

社殿は元々、背後の宮城山（みやしろやま）山頂にありましたが、1344年（康永3年）に火災で焼失しました。その後、備前藩主池田綱政によって現在地である中腹に再建され、備前藩の祈願所となりました。

1871年（明治4年）には国幣中社に列せられ、祭典への勅使参向や、1926年（大正15年）には皇太子裕仁親王の行啓を仰ぎました。第二次大戦後は神社本庁所管の神社として別表神社となっています。

明治年間には、大雨によって本殿後方の法面が崩れた際に弥生時代中期の銅鐸が発見されました。この銅鐸は後に京都大学教授の小林行雄によって学会に報告され、岡山県指定重要文化財として岡山県立博物館に寄託されています。

主な祭事

2月11日 寒中禊（かんちゅうみそぎ）: 宮司を道彦として、近在の男女が海中で行う禊。
4月・9月 全国講社大祭: 氏子地域以外の崇敬者が講社を構成し、春と秋に祭典を催行。
7月11日 夏越（なごし）の祭り: 境内に敷設された茅の輪を3回くぐり、疫病退散、家内安全を願う。
11月下旬 新嘗祭（にいなめさい）: 天皇によってお手植えされた白米と黒米から作られた神酒が下げられ、今年の作物を神前に供え豊作を感謝する。祭典後、参拝者全員に供えられた作物が下げられる。

郷土自然保護地域

神社周辺は1974年（昭和49年）12月18日に郷土自然保護地域（安仁神社地域）に指定されています。

関連図書

安津素彦・梅田義彦編集兼監修者『神道辞典』神社新報社、1968年、4頁
白井永二・土岐昌訓編集『神社辞典』東京堂出版、1979年、14頁

脚注

外部リンク

安仁神社（安仁神社公式サイト）
安仁神社（岡山県神社庁）

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