吉備津彦神社

吉備津彦神社は、岡山県岡山市北区一宮に鎮座する神社です。備前国一宮として古くから崇敬を集め、現在は神社本庁の別表神社に指定されています。「朝日の宮」という別称でも知られています。

概要

岡山市西部の吉備の中山（標高175m）北東麓に位置し、東を向いて鎮座しています。吉備の中山は古来より神体山として信仰されており、北西麓には備中国一宮の吉備津神社があります。両神社は、吉備地方を治めたとされる大吉備津彦命を主祭神とし、その一族を配祀しています。

大化の改新後、吉備国が備前、備中、備後に分割されると、吉備津彦神社は備前国一宮として信仰を集めるようになりました。中世以降は、宇喜多氏、小早川秀秋、池田氏など、歴代の領主から崇敬を受けました。境内には、岡山県道700号岡山総社自転車道線（吉備路自転車道）が通っており、南北の鳥居を潜り、随身門の前を通過する形で境内を横断しています。

祭神

吉備津彦神社には、以下の12柱の神々が祀られています。

主祭神

大吉備津彦命（おおきびつひこのみこと）：第7代孝霊天皇の皇子。若日子建吉備津彦命、比古伊佐勢理比古命とも呼ばれています。崇神天皇10年、四道将軍の一人として山陽道に派遣され、吉備地方の平定に貢献したとされています。その子孫は吉備の国造となり、古代豪族・吉備臣へと発展しました。

相殿神

吉備津彦命（若日子建吉備津彦命、稚武彦命）：大吉備津彦命の弟または子とされています。「吉備津彦命」といえば、一般的には大吉備津彦命を指します。
孝霊天皇：第7代天皇。大吉備津彦命の父。
孝元天皇：第8代天皇。大吉備津彦命の兄弟。
開化天皇：第9代天皇。孝元天皇の子。
崇神天皇：第10代天皇。開化天皇の子。
彦刺肩別命（ひこさしかたわけのみこと）：大吉備津彦命の兄。
天足彦国押人命（あまたらしひこくにおしひとのみこと）：第5代孝昭天皇の子。
大倭迹々日百襲比売命（おおやまとととひももそひめのみこと）：大吉備津彦命の姉。
大倭迹々日稚屋比売命（おおやまとととひわかやひめのみこと）：大吉備津彦命の妹。
金山彦大神
大山咋大神

歴史

社伝によれば、推古天皇の時代に創建されたとされていますが、史料に初めて登場するのは平安後期です。吉備の中山の裾、大吉備津彦命の住居跡に創建されたと考えられています。『延喜式神名帳』には記載されていませんが、一宮制の確立後、備前国一宮となりました。これは、天慶の乱で安仁神社が藤原純友に味方したため、吉備津彦神社がその地位を継承したためだと考えられています。

戦国時代には、松田元成による焼き討ちで社殿を焼失しましたが、その後、宇喜多直家、羽柴秀吉などが崇敬しました。江戸時代には、岡山藩主の池田氏が社殿を造営し、現在の社殿は昭和11年（1936年）に再建されたものです。

明治5年に県社、昭和3年に国幣小社に昇格しました。

境内

本社

夏至の日に、正面鳥居から日が差し込んで祭文殿の鏡に当たるよう設計されています。このことから、「朝日の宮」の別称が生まれたとされています。

主要社殿

本殿：元禄10年（1697年）に池田綱政が再建。岡山県指定文化財。
渡殿
祭文殿
拝殿
石造大燈籠
随身門
平安杉
神池：靏島（鶴島）、亀島、五色島が浮かぶ。

吉備の中山

境内後方の吉備の中山には、多くの古墳や古代祭祀遺跡が残っており、古くから神体山として信仰されていました。山頂には吉備津彦神社の元宮磐座や摂末社があります。

元宮磐座
奥宮磐座
環状神籬
中山茶臼山古墳：大吉備津彦命の墓とされる前方後円墳。
尾上車山古墳
石舟古墳
藤原成親遺跡
吉備考古館

摂末社

子安神社（摂社）：岡山藩主池田氏の崇敬が厚かったことから摂社となりました。社殿は岡山市指定文化財。
楽御崎神社（2社）
尺御崎神社（2社）
岩山神社
下宮
伊勢宮
幸神社
鯉喰神社
矢喰神社
坂樹神社
祓神社
天満宮
稲荷神社
卜方神社
温羅神社
祖霊社
牛馬神社
十柱神社
亀島神社
靏島（鶴島）神社
龍神社

主な祭事

年間祭事

御田植祭

毎年8月2日と3日に行われる五穀豊穣を祈願する神事です。岡山県の無形民俗文化財に指定されています。祭りの期間中は、周辺道路の交通規制が行われます。

御田植祭の流れ

2日：神事（厄神祭、本殿祭、御斗代祭）、夏祭り（縁日、踊り、花火大会）
3日：本殿祭、御旗献納祭

文化財

重要文化財（国指定）：太刀銘（菊紋）井上真改
岡山県指定文化財：本殿、紙本淡彩神事絵巻
無形民俗文化財（岡山県）：吉備津彦神社の御田植祭
岡山市指定文化財：子安神社社殿、随神門・同中門、石造大燈籠、吉備津彦神社流鏑馬神事
天然記念物：吉備津彦神社のアラカシ

現地情報

所在地

岡山県岡山市北区一宮1043

交通アクセス

鉄道：JR吉備線備前一宮駅（徒歩3分）
バス：中鉄バス、備北バス
一般道：国道180号線
高速道路：山陽自動車道吉備スマートIC、岡山IC、岡山総社IC

駐車場

約100台

周辺

吉備津神社
造山古墳

参考文献

『吉備津彦神社略記』
谷川健一編『日本の神々 -神社と聖地- 2 山陽四国』
『日本歴史地名大系岡山県の地名』

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