安倍兄雄

安倍兄雄（あべ の あにお/えお）について

安倍兄雄は、平安時代初期に活躍した公卿です。中納言・阿倍広庭の曾孫にあたり、父は无位の阿倍道守です。最終的な官位は正四位下・東山道観察使、左近衛中将、春宮大夫とされています。

経歴

延暦19年（800年）に従五位下に叙爵し、翌年には少納言に任官しました。桓武天皇の晩年には中衛少将に昇進。平城天皇が即位すると、一気に四階級昇進し従四位下となります。さらに、観察使制度が導入されると、準参議兼山陰道観察使に任ぜられ、公卿の仲間入りを果たしました。その後、東山道、畿内などの観察使も歴任しました。

観察使としては、東山道諸国の正税と公廨稲について、戸口数に応じて増減させることを提案し、許可を得ています。また、国司交代の円滑化のため、前任者と後任者の言い分を記した不与解由状を上申するよう提案しました。

武官としても活躍し、右兵衛督、左近衛中将を兼任しました。大同2年（807年）の伊予親王の変では、左兵衛督・巨勢野足と共に兵士を率いて親王邸を包囲しました。この事件で伊予親王が廃される際、天皇の激しい怒りを誰も諌められない中、兄雄は言葉を尽くして諫争したと伝えられています。その諫争は聞き入れられませんでしたが、筋を通した人物として評価されました。

大同3年（808年）には正四位下に叙せられますが、同年10月に病気のため亡くなりました。

人物像

文才はなかったものの、武芸に秀でており、犬を愛好していたと言われています。性格は実直で節度を重んじ、歴任した官職では公平で清廉な人物として賞賛されました。

官歴

延暦19年（800年） 正月7日：従五位下
延暦20年（801年） 2月5日：少納言
延暦25年（806年） 2月16日：中衛少将。4月12日：兼内膳権正。5月18日：正五位下。5月19日：従四位下。5月24日：大膳大夫兼近江守。閏6月14日：兼山陰道観察使。閏6月30日：準参議。7月14日：兼右京大夫。8月12日：右兵衛督
大同2年（807年） 正月4日：近衛中将。4月16日：停参議。4月22日：左近衛中将
大同3年（808年） 正月25日：正四位下。5月28日：畿内観察使。10月19日：卒去（東山道観察使左近衛中将正四位下春宮大夫）

系譜

父：阿倍道守（阿倍粳蟲の子）
母：不詳
生母不明の子女
男子：安倍吉人（781-837）

参考文献

森田悌『日本後紀 （中）』講談社学術文庫、2006年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

もう一度検索