安息香酸ナトリウム

安息香酸ナトリウム：保存料としての役割と安全性

安息香酸[ナトリウム]は、世界中で広く利用されている保存料です。E番号はE211。安息香酸のナトリウム塩であり、水に溶けるとこの形で存在します。本稿では、その製造方法、自然界での存在、用途、安全性、そして健康への影響について詳細に解説します。

製造方法

安息香酸ナトリウムは、主に安息香酸と水酸化ナトリウムの中和反応によって製造されます。工業的には、トルエンを酸素で部分酸化する方法も用いられます。化学反応式は以下の通りです。


C₆H₅COOH + NaOH → C₆H₅COONa + H₂O

自然界での存在

安息香酸、その塩、そしてエステルは、様々な自然食品に含まれています。特にクランベリーやビルベリーなどのベリー類に多く含まれる他、エビなどの海産物、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品にも見られます。

用途

食品保存料

安息香酸ナトリウムは、酸性食品の保存に効果的な保存料として使用されます。サラダドレッシング、炭酸飲料、ジャム、フルーツジュース、漬物、調味料、冷凍ヨーグルトのトッピングなど、幅広い食品に使用されています。その効果は、酸性条件下で安息香酸に変換され、微生物の増殖を抑制することにより発揮されます。安息香酸は水への溶解度が低いため、ナトリウム塩の形で用いられます。食品への添加量は国によって規制されており、例えば米国では重量0.1％に制限されています。

医薬品

安息香酸ナトリウムは医薬品としても利用されています。尿素回路異常症の治療において、アミノ酸と結合する能力を利用してアミノ酸の排泄を促進し、アンモニア濃度を低下させる効果があります。また、統合失調症の治療におけるアドオン療法としても研究されており、陽性および陰性症状の改善効果が報告されています。さらに、フェニル酪酸と併用して高アンモニア血症の治療、硬膜穿刺後の頭痛や麻薬の過剰投与に伴う呼吸抑制の治療などにも用いられます。

その他の用途

花火におけるホイッスルミックスにも使用されます。

食品保存のメカニズム

安息香酸ナトリウムは、食品中の微生物の増殖を抑制することで保存効果を発揮します。そのメカニズムは、細胞内への安息香酸の吸収から始まります。細胞内pHが5以下に低下すると、グルコースの嫌気性発酵が阻害され、微生物の増殖と生存が抑制されます。

健康と安全

米国では、安息香酸ナトリウムは一般的に安全(GRAS)と認識されています。国際プログラムによる評価でも、ある程度の摂取量までは人体への悪影響は少ないとされています。しかし、猫はラットやマウスに比べて安息香酸とその塩に対する耐性が低いことが知られています。人体では、グリシンと反応してヒブリン酸を形成し、排泄されることで速やかに代謝されます。

清涼飲料中のベンゼンとの関連

安息香酸ビタミンC'>[ナトリウム]]とアスコルビン酸]が共存する場合、[[ベンゼンが生成される可能性があります。米国食品医薬品局(FDA)の調査では、一部の飲料から環境保護庁が定める基準を超えるベンゼンの検出が報告されました。しかし、多くの飲料はその後処方変更され、基準値以下に抑えられています。

多動性との関連

一部の人工着色料と安息香酸ナトリウムの組み合わせが、小児の多動行動に関連するという研究結果が報告されています。しかし、この関連性は安息香酸ナトリウム自体よりも、人工着色料の方に強く関連する可能性が高いとされています。

公定書

安息香酸ナトリウムは、英国薬局方、欧州薬局方、食品化学コーデックス、日本薬局方、米国薬局方などに収録されています。

まとめ

安息香酸ナトリウムは、食品保存料として広く利用され、医薬品としても用いられる有用な物質です。安全性についても多くの研究が行われており、適切な範囲での使用は問題ないとされています。しかし、特定の人工着色料との組み合わせや、アスコルビン酸との反応によるベンゼン生成の可能性については注意が必要です。

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