宗久寺 (恵那市)

宗久寺

宗久寺（そうきゅうじ）は、岐阜県恵那市東野にある曹洞宗の寺院で、山号を萬松山と称します。本尊は観世音菩薩で、恵那三十三観音霊場の七番札所、中部四十九薬師霊場の二十六番札所としても知られています。

歴史

宗久寺の創建は、元和2年（1616年）に遡ります。当時、岩村藩主であった松平乗寿の家臣で代官を務めていた鈴木主馬入道宗久が、領民の要望に応え、年貢が免除されていた土地に庵寺を建立したのが始まりです。開山には、大井長国寺の二世である葉山嫩奕が招かれました。

寺地は当初、松浦屋敷、庄次坊、寺上と変遷しましたが、後に現在の場所に移されました。嘉永6年（1853年）には伽藍が焼失する災難に見舞われましたが、安政6年（1859年）に長栄寺の金端俊猊によって再建されました。

本堂に安置されている聖観音菩薩は、恵那三十三観音霊場七番札所の本尊であり、また、明治18年（1885年）に東野の小堂から移された薬師如来は、別名「はだか薬師如来」と呼ばれる石仏で、中部四十九薬師霊場二十六番札所の本尊となっています。寺宝としては、蓮如上人が文明3年（1471年）に自ら筆を執った六字名号を所蔵しており、これは恵那市の文化財に指定されています。

延命地蔵菩薩 (みずかけ地蔵)

宗久寺には、延命地蔵菩薩、通称「みずかけ地蔵」も祀られています。この地蔵尊は、応仁元年（1467年）の応仁の乱に端を発する歴史を持っています。

当時、美濃国の守護大名であった土岐成頼は西軍に属していましたが、文明5年（1473年）に重臣の斎藤妙椿が伊勢国へ遠征した隙をついて、東軍の小笠原家長や木曾家豊が東濃に侵攻しました。遠山氏はこれに対抗できず、大井城を占領され、ついには釜戸村の荻島城（刈安城）まで落城しました。この戦乱の中で、小笠原勢に参加していた奥州出身の武士、太田某が東野村に辿り着き、臨終の際に「自分の死後、地蔵尊を建立して供養してほしい」と遺言し、村人に金子を渡して亡くなりました。

当時は戦国時代の初期で、戦乱が続いていたため、地蔵尊はすぐに建立されませんでした。しかし、寛文10年（1670年）春、村人たちが霊夢を見たことをきっかけに、地蔵堂が建立され、延命地蔵菩薩が安置されました。それ以来、この一帯は地蔵ヶ平と呼ばれるようになりました。

延命地蔵菩薩は、病気平癒に霊験があるとして多くの人々の信仰を集めています。かつて、足腰が立たなかった者が地蔵堂に21日間参籠して祈願したところ、全快して歩けるようになったという逸話も残っています。その際、快癒した者が奉納したとされる田地一反や、使用していた手押し車と杖は、明治30年頃まで宗久寺に残っていたと伝えられています。

この地蔵堂は、明治20年頃に開墾のために宗久寺境内の現在地に移されました。昭和13年（1938年）には、太田某の子孫である太田けさ氏が、霊感に導かれて福島県会津若松市から宗久寺を訪れたという出来事もありました。

縁日大祭と例祭

宗久寺では、毎年4月24日に縁日大祭が執り行われ、毎月24日には例祭が行われています。

関連寺院

宗久寺と関連のある寺院として、以下の寺院が挙げられます。

長国寺
長栄寺

参考文献

『恵那市史』通史編 第2巻 第八章 江戸時代の社会生活と文化 第二節 社寺と文化 二 仏教と寺院 宗久寺 (1989年)
『郷土東野村』十二章 神社・寺院 宗久寺
* 『恵那郡史』第八篇 現代 第四十一章 人文の発展(一) 【各宗寺院】 (1926年)

宗久寺は、地域の人々の信仰を集めるだけでなく、歴史的にも貴重な文化財を所蔵する寺院として、その存在を今日に伝えています。

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