宝永四ツ宝丁銀

宝永四ツ宝丁銀とは

宝永四ツ宝丁銀（ほうえいよつほうちょうぎん）は、正徳元年（1711年）に鋳造された丁銀の一種で、秤量銀貨です。一般には四ツ宝丁銀（よつほうちょうぎん）とも呼ばれます。発行時期は正徳ですが、宝永期の一連の銀貨の流れを汲むため、宝永丁銀として分類されます。

また、宝永四ツ宝丁銀と宝永四ツ宝豆板銀を合わせて四ツ宝銀（よつほうぎん）と総称します。

概要

表面には大黒像と「寳」の文字、そして四箇所の「宝」字極印が打たれています。「常是」の極印がないのは、元禄15年（1702年）に大黒常是が解任されたためです。祝儀用には「大黒像」極印を12箇所打った十二面大黒丁銀も存在します。

歴史

勘定奉行の荻原重秀の主導により、三ツ宝銀の発行からわずか1年余りで、過去の例に倣い正徳元年（1711年）に銀品位を下げる改鋳が行われました。この際、将軍の決裁を得ず、銀座の内々の証文によって手続きが進められました。財政難を理由に、将軍徳川家宣もこれを黙認せざるを得なかったとされています。

四ツ宝銀の発行にあたっては、旧銀回収を促すため、増歩（交換レート）が引き上げられました。正徳元年中は元禄銀に対し26.2％、二ツ宝銀に対し14.5％、正徳2年中は元禄銀に対し27.7％、二ツ宝銀に対し15％とされました。しかし、これらは正規の触書によるものではありませんでした。

荻原重秀は、度重なる貨幣改鋳について将軍家宣から詰問を受けましたが、「国財が尽きたため銀を改鋳した」と釈明しました。この開き直りの態度に新井白石は激怒し、荻原重秀の罷免を要求、翌年には罷免されました。そして、四ツ宝銀は鋳造停止となりました。

鋳造期間は1年余りと短期間でしたが、鋳造高は元禄銀に匹敵する40万貫余に達しました。これは、低品位であったこと、また旧銀の回収を積極的に行った結果です。

幕府は、一連の改鋳により多大な利益を得て財政赤字を補填しましたが、一方で銀相場の混乱と物価高騰を招きました。正徳4年（1714年）には江戸の銀相場が下落し、正徳5年（1715年）には米価が1石あたり銀230匁にまで高騰しました。これにより、商人の資産価値は下落し、上方の経済は衰退しました。

一方、銀座は改鋳により莫大な収入を得て贅沢を極めましたが、後に不正が発覚し、関係者が処罰されました。

正徳4年（1714年）には良質な正徳銀が鋳造されました。当初、永字銀、三ツ宝銀、四ツ宝銀は正徳銀・慶長銀に対し2倍の重量で等価通用とされましたが、銀品位の異なる銀貨を等価とするのは無理があり、後に市場における割合通用が追認されました。

正徳銀が通用銀となった後も、元禄・宝永期の銀貨はしばらくの間流通を続け、享保3年（1718年）に正徳銀が通用銀と定められるまで、永字銀、三ツ宝銀と共に通用銀としての地位を保持しました。

享保7年末（1723年）には、元禄銀、二ツ宝銀、永字銀、三ツ宝銀と共に通用停止となりました。品位の低いこれらの銀貨は、鋳造時に良質な慶長銀との交換が避けられたため、退蔵されることが少なく、現存数は少ないですが、四ツ宝丁銀は宝永期の丁銀の中では比較的多く現存しています。

宝永四ツ宝豆板銀

宝永四ツ宝豆板銀（ほうえいよつほうまめいたぎん）は、宝永四ツ宝丁銀と同品位の豆板銀で、「寳」の文字と「宝」字を囲むように大黒像が配置されています。「廻り宝」と呼ばれるデザインが基本で、「宝」字の形状で三ツ宝銀と区別されます。

「両面大黒」や「大字宝」、「群宝」などのバリエーションは確認されておらず、丁銀に比べて鋳造量が少なく、現存数も比較的少ないです。

四ツ宝銀の品位

規定品位は銀20％、銅80％です。明治時代に行われた分析では、銀含有量は20.40％、残りはほぼ銅ですが、少量の鉛も含まれています。この銀品位の低さについて、新井白石は「名ばかり銀」と酷評しました。

四ツ宝銀の鋳造量

丁銀と豆板銀を合わせて401,240貫余（約1,497トン）が鋳造されたとされています。分一銀は13％に引き上げられ、幕府が得た出目は94,597貫余でした。

脚注

注釈

出典

参考文献

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