実用化試験局

実用化試験局とは

実用化試験局は、電波法に基づき、新しい無線通信技術やサービスを実用化する目的で、試験的に開設される無線局の一種です。これは、単なる実験段階を超え、実際に社会での利用を見据えた、より具体的な検証を行うためのものです。

定義

電波法施行規則では、「当該無線通信業務を実用に移す目的で試験的に開設する無線局」と定義されています。この定義からもわかるように、実用化試験局は、将来的に実用化を目指す無線通信業務の実現に向けた、重要なステップとして位置づけられています。

概要

実用化試験局は、実験試験局（従前の実験局）で基礎的な実験を終えた技術やサービスを、実際の環境で検証するための橋渡し的な役割を担います。以前は、主に放送分野での利用が多く、民間事業者がFM放送などで実用化試験局を開設し、事業としての実現可能性を検証していました。具体的には、実験試験局では認められなかった営利活動（例: CM放送による収入）が、実用化試験局では可能になるため、事業化に向けた重要な判断材料となっていました。

近年では、携帯電話や無線アクセスの陸上移動局を、上空で利用するケースが増加したことから、電気通信業務での利用が中心となっています。特に、ドローンなどの無人航空機への携帯電話搭載によるデータ伝送技術の実用化に向けた試験利用が活発です。

免許

実用化試験局の免許は、無線局免許手続規則に基づき、予備免許を取得後、落成検査に合格することで付与されます。ただし、一部の検査は登録検査等事業者による点検結果を利用して省略が可能です。種別コードは「DVT」で、免許の有効期間は2年です。

実用化試験局の免許申請が必要となるのは、地上基幹[[放送]]試験局、実験試験局、アマチュア局、衛星基幹[[放送]]試験局以外の業務を実用化するための試験を行う場合です。これらの局は、試験的な要素が含まれているため、実用化試験局としての免許は不要とされています。

電波利用料

実用化試験局に適用される電波利用料は、実用化しようとする無線通信業務の無線局に適用されるものが適用されます。これは、実用化試験局が、最終的に実用化を目指す無線局と同様の扱いを受けることを意味します。

無人航空機への携帯電話等の搭載

携帯電話や無線アクセス技術を無人航空機に搭載し、上空で利用するニーズが高まっています。しかし、これらのシステムは元々地上での利用を前提として設計されているため、上空での利用には通信品質の不安定化や地上への影響などの課題がありました。

このため、陸上移動局の定義を一部変更し、実用化試験局の免許を取得することで、無人航空機に携帯電話や無線アクセス端末を搭載して利用できるようになりました。また、この定義の変更は、有人航空機や気球などの浮遊物にも適用されます。この免許は、電気通信事業者のみに許可されます。さらに、免許申請の際には試験計画書の提出も必要となります。

制度導入当初は、免許取得に2ヶ月程度かかっていましたが、一定の技術基準を満たす場合は、手続きが簡素化され、1週間程度に短縮されました。

運用

実用化試験局の運用は、原則として、実用化を予定している無線通信業務の無線局と同様に運用されます。しかし、試験的な性格を持つため、一部の運用規則が緩和されることがあります。具体的には、無線設備規則において、実用化試験局に適用することが困難または不合理な規定については、例外措置が設けられています。

操作

実用化試験局の操作には、原則として、その無線通信業務を操作できる無線従事者の資格が必要です。ただし、一部の簡単な操作については、資格が不要とされています。具体的には、陸上に開設された特定無線局以外の無線局の通信操作や、人工衛星に開設された基幹[[放送]]を行う実用化試験局との通信を行う地球局の実用化試験局の音声混合器や映像混合器の操作などが該当します。

検査

実用化試験局には、落成検査、定期検査、変更検査が義務付けられています。落成検査は、無線局の設置後に、設備が基準を満たしているかを確認する検査です。定期検査は、衛星基幹[[放送]]試験局に相当するものについて、1年ごとに行われます。変更検査は、無線設備の変更を行う際に行われます。一部の検査については、登録検査等事業者の点検結果を利用して省略が可能です。

沿革

1950年（昭和25年）：電波法施行規則制定時に定義、免許の有効期間は1年と定められました。
1958年（昭和33年）：放送の実用化試験局以外は、運用開始の届出が不要になりました。
1998年（平成10年）：免許の有効期間が2年に延長されました。
2009年（平成21年）：放送を行う実用化試験局以外は、無線業務日誌の備え付けが不要になりました。
2016年（平成28年）：携帯電話端末や無線アクセス端末を上空で利用するには、実用化試験局の免許が必要になりました。
2020年（令和2年）：高度150m未満での無人航空機への携帯電話搭載に関する手続きが簡素化されました。
2023年（令和5年）：高度150m以上での無人航空機への携帯電話搭載に関する手続きも簡素化されました。

まとめ

実用化試験局は、無線技術の実用化において不可欠な存在です。新しい技術やサービスの可能性を検証し、社会実装を加速させる重要な役割を担っています。ドローンなどの無人航空機の登場により、その重要性はますます高まっています。

関連項目

無線局
実験試験局

外部リンク

総務省電波利用ホームページ
* 無人航空機等における携帯電話等の端末の利用

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