室生赤目青山国定公園

室生赤目青山国定公園は、近畿地方中部に位置し、三重県と奈良県にまたがる広大な国定公園です。1970年に揖斐関ヶ原養老国定公園などと共に指定されました。この公園は、室生寺周辺の室生高原、赤目四十八滝がある赤目渓谷、そして布引山地の青山高原と高見山地といった、多様な自然景観を誇る地域を包括しています。もともとは県立自然公園でしたが、太平洋ベルト地帯の緑地帯保護政策の一環として国定公園に格上げされました。

室生火山群地域

位置

室生火山群は、奈良県の東北部から三重県の中西部に位置し、山岳景観が特徴的な地域です。両県境の倶留尊山に見られる柱状節理、赤目四十八滝や香落渓の渓谷、宇陀市の名所旧跡などがあります。

地形地質

トロイデ火山と火山岩の浸食による柱状節理が特徴的な地形を形成しています。第三紀層の噴火活動で岩山が形成され、その後の浸食作用によって現在の地形となりました。赤目峡や香落渓は、新火山岩に属する石英雲母安山岩で構成され、暗灰色で細かな節理が見られます。また、大洞山や尼ヶ岳なども独特の景観を呈しています。

植物

この地域は暖地性植物の北限、寒地性植物の南限にあたり、多様な植物が見られます。常緑広葉樹が多く、寺院の維持のために植林された杉や檜も多く見られます。高地では温帯性落葉広葉樹林、低地では暖帯性常緑広葉樹林が広がっています。天然記念物である宇陀市の室生山暖地羊歯群落、向淵・吐山スズラン群落、県指定記念物の佛隆寺の桜の巨樹、曽爾村門僕神社のお葉付イチョウなど、貴重な植物も多く存在します。

文化

古代文化の発祥地である奈良盆地に隣接し、伊勢へ通じる交通の要所であったため、山地ながら多様な文化景観が見られます。奈良県側では、宇陀市の室生寺に国宝指定の平安建築が残されています。三重県側では、赤目四十八滝の行法道場である延寿院の石造灯籠が文化財に指定されています。

景観

赤目四十八滝：名張川の支流である丈六川に連なる滝の総称です。独特の浸食によって形成された岩壁と、滝壺の広さが特徴で、日本の滝百選にも選ばれています。
香落渓：名張川の支流である青蓮寺川にある渓谷で、柱状節理による壮大な断崖が特徴です。
奥香落：香落谷の小太郎岩から連なる山岳景観で、曽爾三山と共に室生火山群を代表する景観の一つです。
倶留尊山：室生火山群の最高峰で、標高1,037mの塊状火山です。三重県側は急峻な柱状節理が露出しており、山麓には池の平高原が広がります。奈良県側には曽爾高原と呼ばれるススキの草原が広がっています。
曽爾三山：鎧岳、兜岳、屏風岩の総称で、国の天然記念物に指定されています。鎧岳は鎧の腹巻、兜岳は兜の形に似ています。屏風岩は高さ約200m、長さ約2kmに及ぶ柱状節理の断崖です。
室生寺：奈良時代末期に創建された山寺で、平安時代の仏像、絵画、建築物が残されています。
大和高原南部地区：初瀬宇陀川断層崖を構成する貝ヶ平山、香酔峠、額井岳があり、大和高原の南限にあたります。貝ヶ平山では化石が見つかり、額井岳は「大和富士」とも呼ばれています。
鳥見山：神武天皇が皇祖の神霊を祭ったとされる鳥見山中霊畤があります。
大洞山、尼ヶ岳一帯：大洞山は円頂丘火山の典型で、山麓には倶留尊山山麓の池の平に似た高原が広がっています。東海自然歩道は、この地域を横断する主要ルートです。

三峰山地

位置

室生火山群の南に連なる山地で、三重県と奈良県の県境に位置しています。標高1,235.6mの三峰山を主峰とし、南東に台高山脈に連なっています。三峰山の西南には八丁平というススキの高原があり、シロヤシオが群生しています。

地形地質

この地域は、青山高原や室生火山群とは異なり、花崗岩類からなる中央構造線に位置しています。1,000m級の山々が連なり、南側は断崖、西側は緩やかな傾斜で室生火山群に繋がっています。高見峠は櫛田川と吉野川の分水嶺であり、行政の境界でもあります。

植物

室生火山群と同様に、暖地性植物と寒地性植物が混在しています。高所には寒地性植物、中腹以下には暖地性植物が見られます。特に三峰山付近の湿原にはシロヤシオが群生し、高見山に至る稜線にはブナの原生林が残っています。

文化

旧伊勢街道沿いに位置し、紀州侯の参勤交代や伊勢神宮参拝の道として利用されてきました。高見山頂には高角神社があり、中腹には口窄天開山泰運寺があります。

景観

三峰山地は、ブナの原生林やシロヤシオの群落など、豊かな植生が特徴です。泰運寺や伊勢街道沿いの陣屋跡など、史跡も多く残っています。

台高山脈

位置

三重県の最西部に位置し、奈良県境にまたがる山地です。大台山系に連なり、標高1,300m前後の山々が連なります。

地形地質

紀伊山地の東部に位置し、古い水成岩からなっています。三重県側は櫛田川の上流、奈良県側は吉野川の支流にあたり、急流による浸食でV字型の渓谷が形成されています。

植物

標高700m以上の高地にはブナを主とする温帯性落葉広葉樹林が残り、700m以下にはスギやヒノキの造林地が多く見られます。三重県側の渓谷沿いにはシャクナゲが群生し、国見山の東側鞍部にはオオイタヤメイゲツの純林が残っています。

景観

香肌峡：櫛田川の上流に位置し、変化に富んだ渓谷景観が特徴です。シャクナゲやツツジが群生し、ムカデランの群落も見られます。アユやアメゴも生息し、釣り人も訪れます。
蓮川：櫛田川の支流で、宮の渓や江馬小屋渓など、未開の渓谷美が残っています。
高見川渓谷：吉野川の支流で、なだらかな地形が特徴です。
台高山脈山頂一帯：ブナの原生林が広がり、国見岳の南東鞍部には明神平があります。

青山高原

位置

笠取山で代表される青山高原は、三重県の西北部に位置し、標高700mから800mの丘陵地帯です。

地形地質

鈴鹿山脈と布引山系に属する火山群によって形成された古い火山地帯で、大部分が花崗岩からなっています。東側は緩やかな傾斜で、西側は急峻な地形となっています。

植物

暖地性植物と寒地性植物が混在し、ススキ草原やヤマザサが見られます。アセビ、イヌツゲ、ツツジが多く、奥山愛岩社（権現神社）境内林にはブナの原生林が残っています。

文化

新大仏寺があり、平重衡の兵火で焼かれた東大寺大仏殿を再建した俊乗坊重源上人によって創設されました。この寺には板五輪塔があり、松尾芭蕉の句も残されています。

景観

笠取山から三角点までの丘陵地帯から、伊勢平野や伊勢湾、吉野熊野国立公園大台ヶ原、伊賀盆地などを望むことができます。

主な観光地

室生寺
赤目四十八滝
香落渓
青山高原
メナード青山リゾート

室生赤目青山国定公園