宮野尹賢

宮野尹賢（みやの いけん）

宮野尹賢は、江戸時代中期の1682年に出羽国秋田郡綴子村（現在の秋田県北秋田市綴子）で生まれました。代々「伊兵衛」を名乗り、敏斎と号しました。宮野家は豪農であり、彼は幼い頃から学問を好みました。

京都での修学

1715年、宮野尹賢は瀬尾源三郎に同伴して京都に上り、伊藤仁斎の門下に入りました。仁斎の元で漢学を深く学び、その思想に触れました。京都での学びは、彼の思想形成に大きな影響を与えました。

内館塾の開設と教育活動

1730年、宮野尹賢は故郷に戻り、内館塾を開設しました。塾では漢学と道徳を説き、多くの門人を集めました。内館塾は公許され、大館城代の佐竹義村、佐竹義休も学んだと伝えられています。山本郡や北秋田郡の学徒が彼の教えを求めて集まり、神宮寺烈光、般若院英泉、大徳院玄吼などが主な門人として知られています。また、京都から女性を伴い、礼儀作法の模範を示したという逸話も残っています。

建部綾足との交流

1739年、建部綾足が宮野家に滞在し、病気のため越年しました。この滞在中に、二人の間でどのような交流があったのかは定かではありませんが、文化人同士の繋がりを示すエピソードとして知られています。

蔵書家としての側面

宮野尹賢は、有名な蔵書家でもありました。京都でも入手困難な珍本を多数所蔵しており、死ぬ前にそれらを全て知人に分け与えたと伝えられています。彼の蔵書や写本、書簡の一部は内館文庫に所蔵されており、神道常世草、春秋胡氏伝序事考、自縦抄講義、神宮秘伝問答、風犬顛犬病記、七座天神宮鐘銘記など30余種が現存しています。

理財の才能

宮野尹賢は、理財の道にも通じていました。現在の国道105号中央部東側には、彼が所有していた「宮野田」と呼ばれる広大な美田がありました。また、弘前藩に米4万俵を貸し付け、その抵当として弘前藩内の森林の一部が「宮野沢」と呼ばれているという説もあります。

人物交流

松橋栄信の『鷹巣地方研究』には、宮野尹賢が京都滞在中の般若院栄泉に書籍を注文し、大館の長井某または岩瀬の伊多波武助の船便で送ってもらうように依頼した書簡が出品されたという記述があります。このことから、宮野尹賢と般若院栄泉、伊多波武助との間に交流があったことがうかがえます。

宮野尹賢は、宝暦8年2月29日（1758年4月7日）に亡くなりました。彼の教育者、蔵書家としての功績は、現在も語り継がれています。

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