密蔵院 (春日井市)

密蔵院（みつぞういん）

概要

密蔵院は、愛知県春日井市熊野町に位置する天台宗の寺院です。醫王山という山号を持ち、本尊には薬師如来が祀られています。この寺院は、中部四十九薬師霊場の第30番札所としても知られており、多くの参拝者が訪れます。

歴史

密蔵院の歴史は、1328年（嘉暦3年）に美濃御嵩から訪れた慈妙によって開創されたことに始まります。かつては尾張における天台仏教の中心地として栄えた小牧市の正福寺が衰退した後、この密蔵院が尾張地方における天台宗の中心的な役割を担うようになりました。最盛期を迎えた永享末年（1441年）頃には、尾張・美濃を中心に11カ国に700ヶ所もの末寺を持ち、36坊の塔頭を抱えるほどの大寺院に発展しました。七堂伽藍も備えられ、葉上流の伝法灌頂の道場として重要な役割を果たしていました。当時の学徒は3,000人を超えていたと伝えられています。

しかし、戦国時代に入ると、織田信長が延暦寺と対立した影響を受け、密蔵院も衰退を余儀なくされます。末寺は約100寺、塔頭も16坊にまで減少しました。その後、葉上流31世の珍祐が元和元年（1615年）に密蔵院に移り、七堂を再興。さらに、名古屋城三の丸に東照宮が建立されると、その別当となるなど、復興に尽力しました。葉上流の灌室を有し、僧侶に位を授ける寺院であったため、檀家を持たなかったことが、明治以降の維持を困難にする一因となりました。明治24年（1891年）の濃尾地震では、本堂、仁王門、灌頂堂が倒壊するなど大きな被害を受けました。1932年（昭和7年）の時点では、塔頭は常泉坊のみとなっていました。常泉坊（現在の常泉寺）は、1950年（昭和25年）に春日井市内の大留町に移転し、現在に至ります。

文化財

密蔵院は、歴史的に重要な文化財を数多く所蔵しています。

重要文化財（国指定）

木造薬師如来立像：平安時代後期に制作されたもので、密蔵院の本尊。
多宝塔：室町時代前半に建立された。

愛知県指定有形文化財

絹本著色兜率天曼荼羅
絹本著色天台大師像
絹本著色千手観音菩薩像
銅製仁王像
木造十一面観音像
礼盤2基
鉄釣灯籠 宝治三年銘：2022年（令和4年）1月28日に指定された。

春日井市指定有形文化財

これらの文化財は、密蔵院の歴史と文化的な価値を示す重要なものです。

交通手段

JR中央本線 春日井駅、神領駅から徒歩で約20分。
かすがいシティバス「熊野町」バス停から徒歩で約10分。

参考文献

『日本歴史地名大系 オンライン版』（小学館） - 『日本歴史地名大系』（平凡社刊）の1979年～2002年を基にしたデータベース。
『尾張名所図会』 第三巻　密蔵院、1844年

関連項目

密蔵院
賢林寺

外部リンク

密蔵院
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