寶心寺

寶心寺は、岐阜県中津川市付知町にある高野山真言宗の寺院です。藤戸山という山号を持ち、静かな山中に佇んでいます。

歴史

寶心寺は、鎌倉時代に大威徳寺の末寺として、付知村の虚空蔵山の山頂に創建されました。当初は虚空蔵菩薩を本尊とし、「三昧耶寶心」という真言宗の経典に由来する寺号を持つ古刹でした。

しかし、戦国時代の永禄12年（1569年）に、苗木城主の遠山直廉が武田信玄の命を受け、飛騨国へ侵攻した際、大威徳寺が戦火に巻き込まれました。さらに、天正13年（1586年）の天正地震によっても大きな被害を受け、寶心寺は廃寺となりました。その後、長い年月を経て、昭和25年（1950年）に、付知町の篤志家たちの尽力により、高野山金剛峰寺に再興が懇願されました。その結果、高野山の管長猊下の命により、寶心寺は再興されることになったのです。

翌昭和26年（1951年）には、山門の右手に本堂が完成し、光城和尚が招聘され、見事に再興を果たしました。内陣の荘厳な飾り付けは特筆すべきもので、左右の控えの間に設けられた板戸には、珍しい彩色画が施されています。

境内

境内の見どころの一つに、薬師堂があります。ここには、厨子入りの薬師如来坐像が安置されており、その服には菊花が刻まれているのが特徴です。この像は、兵庫県たつの市の圓融寺から伝えられたとされています。また、薬師堂には、中興後に付近の住民が付知川で発見したという霊石も安置されています。この霊石は「瑠璃光さすり仏」と呼ばれ、祈願することで不思議なご利益があると言われています。毎年5月13日には霊石法要が執り行われ、真言密教秘伝の「ほうろく灸」が授与されます。

稲荷社もまた、寶心寺の重要な構成要素です。弘法大師が本地垂迹した両部神道に基づいた信仰の場で、稲荷大神は、伊勢神宮の外宮、あるいは熊野三山の奥宮である玉置神社の三所権現と同一視されています。

寺宝

寶心寺の宝物の中でも特に注目すべきは、大阪府岸和田市の久米田寺が所蔵していた伝明兆作の十六羅漢図です。この絵画は、岐阜県指定の重要文化財に指定されており、その歴史的・美術的価値は非常に高いものです。

寶心寺は、長い歴史の中で数々の困難を乗り越え、現代にその姿を伝えています。訪れる人々にとって、心の安らぎと歴史の重みを感じられる場所と言えるでしょう。

関連リンク

十六羅漢　岐阜県ホームページ

参考文献

『中部四十九薬師巡礼』 p170～p173　中部四十九薬師霊場会　冨永航平　朱鷺書房　1999年

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