寺山久兼

寺山久兼（てらやま ひさかね）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で、薩摩国島津氏の家臣として活躍しました。『本藩人物誌』には、「武勇智謀兼備の人」と評されており、その武勇と知略を兼ね備えた人物であったことが伺えます。

生涯

久兼の父である直久は、島津淡路守の三男で、薩州家2代・島津国久の六男である島津光久の養子となっていました。しかし、直久が9歳の時に島津貴久の人質となると、そのまま貴久に仕えることになりました。永禄元年（1558年）、直久は島津姓を遠慮し、寺山氏を名乗るようになりました。

久兼は、貴久の後を継いだ島津義久に仕え、天正14年（1586年）の岩屋城攻めに参加しました。この戦いでは、敵の放った大石が兜を直撃しましたが、久兼は全く動じず、合戦に加わり続けました。その勇猛さは、周囲を驚かせたことでしょう。

文禄・慶長の役にも従軍し、慶長3年（1598年）には、手勢2-300を率いて晋州望津の塞を守備しました。同年6月20日、明軍が大規模な攻撃を仕掛けてきたため、久兼は晋江で対陣することになりました。久兼は、山に火を放ったり、鉄砲を鳴らすなどして、明軍が晋江を渡河するのを阻止しました。さらに7月10日には、酷暑のために明軍が川で水浴びをしているのを見て、夜半に精鋭の鉄砲足軽2-30名を川辺に潜ませ、翌朝、水浴びに来た明軍を銃撃するという奇策を実行しました。これにより、明軍に大きな損害を与え、戦局を有利に進めました。その後、9月頃まで対陣を続けましたが、泗川新城にいた島津義弘から招集命令が下ったため、望津の塞を焼き払い、新城へ移動しました。泗川の戦いでも、鉄砲隊を率いて活躍し、大きな戦功を上げました。

慶長4年（1599年）に庄内の乱が発生すると、島津勢は敵となった伊集院忠真方の城に近い大隅国市成城にも兵を入れることになりました。市成城は要害ではないため、知勇兼備の大将でなければ守ることができないと判断され、久兼がその任に選ばれました。同年6月、島津忠長と樺山久高が伊集院方の大隅恒吉城を攻め落とすと、今度は久兼が恒吉城の守備を任されました。

慶長16年（1611年）、久兼は45歳でこの世を去りました。その生涯は、戦国時代から江戸時代初期という激動の時代を、武将として駆け抜けたものでした。寺山久兼は、武勇だけでなく、知略にも長けた人物であり、その活躍は後世にまで語り継がれています。

参考文献

* 『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）

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